過去ログ - 入り口に座って
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6:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:20:52.92 ID:KdxeMUnZ0
眺めているだけでも、時間は経っていく。夏を超えて冬を超えて、春を過ごしてまた夏になる。
極めて他人行儀かつ、社交辞令的な会話を幾つも重ねても、距離が縮まることはなく、それは私も望んでいなかった。
遂には、終わりを迎える時がきた。

「私ね、車の免許とったのよ。MTで、凄いでしょ。」
以下略



7:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:21:26.51 ID:KdxeMUnZ0
「そう、電車乗るのもそろそろ終わりね。」

どこかでわかっていたのだろうか、あまりショックは無かった。美術品が倉庫に送られていく感覚に近い、残念だけど、仕方ない、そんな感覚だった。
けれど、一つだけ聞いておきたかった。

以下略



8:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:22:06.32 ID:KdxeMUnZ0
それが私が記憶する、あの人との最後の意味ある会話である。


9:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:22:57.07 ID:KdxeMUnZ0
それからも私は電車に乗り続けている、あの人の定位置は私の定位置となり、いつかまたのらないかな、なんて淡い期待を胸に同じ道を抜けていく。

だけど、少しだけ「二度と会えなくてもいい」なんて思ったりもする。
思い出が綺麗なまま、そのままであって欲しいのだ。今会えたなら、今度は距離を縮めてしまう。そうなればかつての記憶は薄れてく。
それならば、綺麗で、淡くて、愛おしいままにとっておきたいのだ。


10:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:23:41.59 ID:KdxeMUnZ0
そんなワガママな気持ちをよそに、年月は経っていく、ウトウトしながら電車に乗り、女子高生だった私は大人になった。頑なに免許を取らないで電車に乗り続ける私を周りは奇異な目で見るけれど。気にはしなかった。あの人もこんなんだったのだろうか。


11:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:24:19.43 ID:KdxeMUnZ0
仕事へ向かう朝早くアナウンスでウトウトから覚醒する。
一つ隣の町についたらしい、けれど、人はいない、いない?嘘だ、一人いる。
女子中学生、そうか、春か。新入生か。街の高校へ行くのだろう。
出入口から反対側へ、人が通れるようにしておこう。
恐らくは彼女は座席に座るだろう、暫くたったらここに来る、そんな気がするのだ。
以下略



12:名無しNIPPER
2017/09/12(火) 00:24:46.76 ID:KdxeMUnZ0
短いですが終わりです。ありがとうございました。


13:名無しNIPPER[sage]
2017/09/12(火) 18:32:52.25 ID:1El1mv3N0
おつ


14:名無しNIPPER[sage]
2017/10/16(月) 07:49:29.99 ID:GNr6t2ZQO
良い、凄く
すんごく良い


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