過去ログ - 武内P「あだ名を考えてきました」
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490:名無しNIPPER[sage saga]
2018/05/06(日) 00:06:44.65 ID:v3SmJyH4o
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「……ふぅ」


 渡された暖かいお茶を飲み、一息つく。
 思ったよりも体が冷えていたようで、ちょっと驚いた。
 足の痛みも引いてきたし、これなら、明日のダンスレッスンも問題なさそうね。
 ……良かった。
 酔っ払っての失敗だとわかったら、お酒を控えるよう言われちゃうもの。


「飲み終わったら、移動しましょう」


 隣に――と言っても、離れた位置に座る彼が言う。
 手を伸ばせば、ギリギリ届くか届かないかの、微妙な距離。
 これが、私と彼の距離。
 プロデューサーとアイドルの、適切な距離。


「はい。すみません……ここまでしていただいて」


 頭を下げ、謝罪の言葉を述べる。


 彼は、私を探してくれていたのだ。
 お店を出た後、気がついたら居なくなっていた私を気にかけた瑞樹さんから連絡を受けて。
 これじゃ、本当に子供扱いじゃないですか。
 いくらはしゃいでたとは言え、私だっておかしな失敗は……やっぱり、瑞樹さんって凄いわ。


「いえ……私のせいだと、川島さんに叱られてしまいました」


 そう言って、彼は右手を首筋にやって、困った顔をする。
 この人のせいだって叱るなんて……私、彼女に何を言ったのかしら。
 何か、文句を言っていた気がするけど、ええと……?


「貴方のせい、ですか」


 でも、瑞樹さんがそう言ったなら、きっと、貴方のせいで間違いありません。
 だったら、文句の一つ位言っても、


「だったら――」


 構わないですよね。


「――おんぶ、してください」


 そう言って、両手を彼の方に差し出す。
 そんな私を見て、彼は目を見開いて、ふふっ、驚いてるわ。


「あっ、いえ、しかし! その、まだ……足が痛むのでしょうか?」


 これは、ただのワガママです。
 文句もワガママも、そう、変わらないと思うんです。
 変わらないなら、どちらを言っても、同じだと思いませんか?


「はい♪」


 こどもの日の最後に伝えた、私の子供のようなワガママ。
 そして、公園の大きな時計の針が、十二時を過ぎたのを静かに告げていた。
 ひっそりと、誰にも知られること無く、シンデレラの魔法が溶けた。


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