294:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/24(土) 22:38:57.01 ID:QGx9u0Uyo
「アーニャ、ちょっとホームシックみたいなの」
ホームシック。
その言葉を聞き、少し驚いた。
普段の彼女からは、そんな様子は微塵も伺えなかったからだ。
いつも明るく、穏やかで、白い妖精のような存在。
それが、私がアナスタシアさんに抱いていたイメージだ。
「ロシアから北海道へ行って、そして、今度は両親からも離れて、さ」
確かに、彼女はあまり日本語が得意だとは言えない。
意思の疎通が出来ないという事は無いのだが、少し難儀している場面も多々ある。
恐らく、それが積み重なってホームシックという形になったのだろう。
「それに、最近は二つのプロジェクトを掛け持ちして、忙しいから……」
渋谷さんと、アナスタシアさんは、二つのプロジェクトを兼任している。
シンデレラプロジェクトと、プロジェクトクローネ。
二つのプロジェクトを掛け持ちしつつ、学校へ通い、レッスンも受ける。
私には想像もできない程の、彼女達しか知り得ない苦労もあるのだろう。
そういった面でのケアが出来ていたか、あまり、自信が無い。
「だから、さ。寝ぼけて布団に入るくらい、許してあげてよ」
渋谷さんは、夜中、フラフラと起き上がったアナスタシアさんが私の部屋に入るのを見たそうだ。
そして、夢遊病のような足取りで、私の布団に潜り込み、今の体勢になった、と。
そう、教えてくれた。
「……なるほど、そういう事でしたか」
眠る、アナスタシアさんの顔を見つめる。
この穏やかな寝顔は、私の胸に顔を預け、安心しきっているからなのだろうか。
先程の寝言から察するに、私を父親と勘違いしているのかもしれない。
そう考えると、こんな大きな娘はまだ……と、思う気持ちと、
頑張る我が子を見守る父親のような気持ちの二つが溢れてくる。
「……ん」
アナスタシアさんを起こさないよう左腕を曲げ、頬にかかる髪を優しくどかす。
すると、少し眉間に寄っていた皺がなくなり、より一層、穏やかな寝顔になった。
「……さて」
渋谷さん? それで、貴女がそこで寝ている理由は?
1002Res/516.46 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。