576:名無しNIPPER[sage saga]
2018/03/06(火) 22:49:30.37 ID:rZbIlTLeo
「〜♪」
紅茶の、良い香りが鼻をくすぐる。
それまで嗜好品と言えばお酒だったけれど、
家族が増えるってわかった時、代わりになるものをって必死に探したのよね。
そして、つわりがひどい時でも平気だったのが、紅茶。
貴方も、紅茶を淹れるのが随分上手くなったけど、
私が淹れた紅茶を無言で飲みたがってたのを良く覚えてるわ。
「〜♪」
可愛らしい、お揃いの花柄のティーセット。
壊れてなくて――壊してなくて、本当に良かった。
これがなかったら、貴方と一緒に紅茶を楽しむ時、困っちゃってたから。
「〜♪」
……うん、賞味期限がギリギリだったけれど、とっても良い香り。
懐かしい、幸せだった時の、香り。
貴方が居て、あの子達が居て、皆、笑顔で。
笑顔で幸せだった時の、我が家の香り。
「〜♪」
カップに注いだ紅茶を彼に渡――せない、から、
私の正面の、彼の定位置だった場所にそっと差し出す。
――お互いが子供の隣の方が、何か会った時すぐ対処しやすいから。
なんて、それっぽい事を言って誤魔化そうとしてたけど、気付いてたんですから。
貴方が、時たまこっちを見て、幸せそうな顔をしてた事くらい。
「〜♪」
子供達の分のジュースは、買ってある。
二人共、お父さんに似て甘い物が好きだったわよね。
ふふっ、俺んちのオレンジジュース、って、今でもハッキリ覚えてるの。
私は、急なダジャレに驚いて。
貴方は、息子が‘俺’って言った事に驚いて。
「〜♪」
ああ……美味しい。
こんなに落ち着いた気分で紅茶を飲んだのなんて、本当に久しぶり。
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