699:名無しNIPPER[sage saga]
2018/03/09(金) 23:15:34.61 ID:h5oZCgCQo
>>695一行目
「……申し訳、ありません」
彼の顔から、生気が失われていく。
横たわった背中から、赤い、赤い血が溢れてくるのが見える。
命がこぼれ落ちていくのを私は、ただ、見ている事しか出来ない。
「約束を……守れそうに、ありません」
彼は、助からない。
私の命を守るために、己の体を盾にして負った傷。
それは深く……彼自身も、自分の命の灯火が消えようとしているのを理解している。
足掻きたい。
けれど、そんな事をしていては、彼の最期の言葉を聞き逃してしまう。
それだけは、出来ない。
「……笑顔です」
彼の手が、私の頬に触れそうになったが、その動きがピタと止まった。
この不器用で、誠実な私の騎士は、自らの血で私の顔が汚れるのを嫌ったのだろう。
……わかってない! 本当、何もわかってない!
「っ……!」
両手で彼の手を掴み、私の顔に押し付けた。
私の騎士の血で私が濡れる事なんて、躊躇うわけないでしょ!
「頑張って……ください」
きっと私の進む先には、幾多の困難が待ち受けている事だろう。
それなのに、私の騎士はここから先へは行けないと言うのだ。
だけど、聞き入れない訳にはいかない。
「行くよ……蒼い風が、駆け抜けるように」
残った兵達に、声をかける。
約束を果たさなかった私の騎士の、最期の言葉に応えるために。
振り返らず、前を向いて。
いつまでも、見守っててね。
――いつまでも。
そして、いつか――
「アイドルに、興味はありませんか?」
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