過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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374:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:08:00.13 ID:Ae62FiCR0
自分が“天才”かどうかはともかく、“特殊”であるのは分かる。スペクトルの極限にいるという事を。
幼い頃からそれなりにチヤホヤされてきたものだから、言い訳がましいけど、多少なり調子に乗るのも無理は無かった。
おまけに自意識過剰で、傲慢で、言うこと聞かなくて、だのに何でも上手くこなせる存在は、万物平等を是とするコミュニティの中にあってはどうしようも無くうっとおしい。
375:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:13:38.80 ID:Ae62FiCR0
海の向こうの退屈な講義に飽きて帰国したアタシの目に飛び込んできたのは、行儀良く並んだビルのとある一面。
まるで花火のように、存在をこれ見よがしに主張する極彩色のモニターだった。
次の瞬間気づいたのは、極彩色なのはモニターそのものではなく、それに映る会場と人であったこと。
376:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:16:32.64 ID:Ae62FiCR0
本気を出したことが無い、なんてことは無い。
ダッドと暮らしてた頃、彼はすっかりアタシが何でもできるものだと信じ込んで、無茶な要求を際限なく突きつけた。
応えられなかった要求こそ無かったけれど、アタシでさえ常軌を逸していると思えたそれに、付き合うのはもうウンザリで、だから逃げた。
377:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:21:12.94 ID:Ae62FiCR0
アイドルになるには、大きく二つの方法があるらしい。
事務所に直接申し込んでオーディションを受けるか、スカウトされるか。
後者の方が簡単だ。
378:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:22:45.05 ID:Ae62FiCR0
彼の指示に倣い、強引に取り入ってその世界を覗き込み、分かったことは二つ。
一つは、彼女達を夢中にさせるものの正体。
トップアイドルという、魅力的かつ抽象的なそれは彼女達の夢であり、そこへ至るアプローチも様々だ。
379:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:24:43.62 ID:Ae62FiCR0
どうやって? とアタシが聞くと、彼は真面目な顔を崩さずにこう言った。
「まず、君達には今度のサマーフェスで負けてもらいたい」
正確には、高垣楓さんという人を優勝させたいのだという。
380:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:28:26.02 ID:Ae62FiCR0
それで、キミもその甘い汁を吸いたいワケだ、と茶化したら、彼は首を振った。
「言っただろう、状況を変えたいのだと。
少なくとも、大人達の都合で彼女達が振り回されていくのを見るのはもう嫌なんだ」
381:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:30:19.99 ID:Ae62FiCR0
彼がアタシにその計画を告白した理由は結局聞けずじまいだったが、強引に推察するとこうだろうか。
「欲望こそ人の心の根幹であると、アタシに伝えたかった」とか、ね。
彼は真面目だ。協力を求めるからには、アタシに何かしらのギブをしたかったのだろう。
382:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:32:16.48 ID:Ae62FiCR0
計画は、思ったよりも原始的だったようだ。
誰かが音声プラグを引っこ抜くことで、アタシ達のステージを台無しにしようという算段だったみたい。
383:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:34:17.86 ID:Ae62FiCR0
あんなに上手くいくとは思わなかったし、楓さんが優勝しなかったのはそれ以外の理由もあったのだろう。
でも、一つだけ分かるのは、そう――とても楽しかったのだ。
384:名無しNIPPER[saga]
2017/12/19(火) 00:38:03.07 ID:Ae62FiCR0
行動に対する責任を負うという覚悟が、アタシには足りていなかったのだと、気づいたのはその後だった。
想定外の事態を受け、混迷を極める上層部を尻目に、アタシ達は爆発的な人気を集め、サイコーに楽しい状態。
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