過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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492:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:30:00.76 ID:m6szqZZ10
 我慢して地元の高校を出て、東京の大学に進学する際、ようやく俺は上京した。

 奨学金で学費を賄い、バイトして金を貯めるだけの4年間だった。

 実家の援助は断った。
以下略



493:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:33:40.95 ID:m6szqZZ10
 二年目は現場から離れ、一転して本社の営業に回された。

 クライアントと設計部を行ったり来たりして、案の定その板挟みに遭う仕事だ。

「こんな事もできんのか」とクライアントにはどやされ、「何でも首を縦に振ってくんじゃねぇ」と設計部からは突き返される。
以下略



494:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:35:54.59 ID:m6szqZZ10
 努力した先に輝かしい未来が待っていると信じていた。

 期待に胸を膨らませる俺を待ち受けていたのは、クソのような現実だった。


以下略



495:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:38:28.65 ID:m6szqZZ10
 デスマーチを経てなんとか工事は終わらせたものの、待っているのは監査と会計検査だ。

 タチの悪い事に、東京都や国からの補助金を充当している工事であり、発注方法から何から説明を求められる。

 ルールをねじ曲げた、と説明できるはずが無く、かといって合理的な説明もできない。
以下略



496:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:44:32.01 ID:m6szqZZ10
 世の中にはもっと苦しい事もあるだろうし、俺の受けた苦しみなんて屁みたいなもんだと言う人もいるだろう。

 俺も、今振り返ってみれば、やりようはどうにかあったし、それに耐えた先の未来もあっただろうと思う。

 だが、人の幸不幸や苦しみは、定量的に、相対的に量れるものではない。
以下略



497:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:46:10.40 ID:m6szqZZ10
 給料は下がったが、民間時代に使う暇も無いまま蓄えたものもあったので、それほど切迫感も無かった。

 電話応対、施設使用者への鍵の貸し出し、設備や備品の点検、チラシの張り出し。

 同僚のおじちゃん、おばちゃん達と菓子を摘まみ、窓口の客と世間話をしながら、ゆっくりと時間が過ぎていく職場だ。
以下略



498:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:49:05.58 ID:m6szqZZ10
 俺が勤めていた施設は、規模が中途半端であった分、その利用者も微妙に幅広かった。

 爺さん婆さん達で構成される生涯学習サークルの、音楽やら演劇関係の発表会。

 うさんくさそうな大学教授や某企業の社長さんによる講演会。
以下略



499:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:50:59.53 ID:m6szqZZ10
 その子は、小学校の合唱発表会で来ていたようだった。

 ただ、周りの子達と溶け込めておらず、一際目を引く青みがかった綺麗な長髪が、余計に異質な存在感を放っていた。

 他の子達も、露骨にイジメている訳ではないものの、明らかに彼女の事を煙たがっているようだった。
以下略



500:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:54:33.36 ID:m6szqZZ10
 学校の皆とは、一緒に歌いたくない?  ――少女は、頷いた。

 一緒に歌ったことは、あるの?  ――少女は、首を振った。


以下略



501:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:56:30.80 ID:m6szqZZ10
 柄にも無くキザったらしい事をしてしまったが、まぁ――これはこれで、良かったのかな。

 そう、一人客席の隅っこに立って物思いに耽っていると、後ろから肩を叩かれた。

 誰だ、館長か? やべっ、サボッてるのがバレ――た訳では無かった。
以下略



502:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 19:57:18.43 ID:m6szqZZ10
 マルチ等の勧誘を断る際のセオリーは、その場でキッパリ断ること。

 話だけ聞く、という半端な対応は御法度であるという。


以下略



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