過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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574:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:15:55.43 ID:m6szqZZ10
「さて――付き合わせて、悪かったな」
ふぅ、と息をついて、プロデューサーは手を差し出した。
「ジュース」
「えっ? ――あぁ」
575:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:18:07.75 ID:m6szqZZ10
ケラケラと、背後の柱の影から、すっかり板についた彼のモノマネをする声が聞こえる。
先に帰って、って言ったのに――本当、物好きね。
「ま、言ってもあの人なりにさ、奏ちゃんやあたしらを心配してくれてるって事で、許してやんなよ」
576:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:22:50.60 ID:m6szqZZ10
(・)
「いや〜ご多用の中お時間いただきましてありがとうございます〜。えぇ、私、お電話でお話させていただきました――!」
577:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:25:21.09 ID:m6szqZZ10
「えっ――他の自治体でも、このような事業に参加した事例があるのですか?」
窓口で鬱陶しそうに俺の話を聞いていたハゲ面の中年職員が、少し反応した。
「そうなんですよぉ〜意外でしょう? 例えば東京都さんですとか、あとは23区ですと千代田区さん、中央区さん――」
578:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:27:27.56 ID:m6szqZZ10
「こちらですと、出演者をというより、会場をより強調してご案内する形になろうかと存じます。
ご指摘いただきました、公平性という面においても、宣伝の主題を会場とするこのレイアウトであれば、解消されるのではないかと」
と言いつつ、下部に寄せた出演アイドルの写真は、ちゃっかりLIPPSが真ん中だ。
579:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:29:20.14 ID:m6szqZZ10
握り拳を口元に当て、少し唸った後、職員はとりあえずと言った様子で渋々頷いた。
「他の自治体にもヒアリングをして、こちらとして支障が無いと判断できましたら、いただいたチラシと併せて掲示しておきます」
「ありがとうございます。その際は、お手数ですが私にもご一報いただければ幸いです」
580:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:32:01.86 ID:m6szqZZ10
課長からは、新たなアイドルをスカウトしてこいとのお達しを受けている。
だが、当然に俺はそれをする気などサラサラ無かった。
一方で、俺が今行っているのは、俺が最も嫌いな仕事でもあるというのが、どうにもままならない。
581:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:34:45.82 ID:m6szqZZ10
数年おきに転職を繰り返してきた俺には、培ってきたスキルなど何一つ無い。
あるとすれば、色んな業界を渡り歩く中で得た、各方面の浅い知識と、浅い人間関係。
それだけが俺の武器だった――いや、今はそれを武器にしなくてはならない。
582:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:37:24.67 ID:m6szqZZ10
「――その呼び方はやめてください」
「ハッハッハ、水くさいことを言うな、元気にしていたかね?
ん? 君はもうここの職員じゃないのか」
その爺さんは、何かの契約のための印鑑証明を取りに来ていたらしい。
583:名無しNIPPER[saga]
2017/12/20(水) 23:41:36.14 ID:m6szqZZ10
――――。
まさか、またここに来ることになるとは――。
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