過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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716:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:24:27.43 ID:qh1EHTqN0
困惑しながら事務室に戻ると、アリさんがにこやかに手を振って俺を出迎えた。
やられた――彼は、全て知っていたのだ。
717:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:26:11.93 ID:qh1EHTqN0
『アイドル・アメイジング』が終わって直後、LiPPSの世話は熾烈を極めた。
話題が話題を呼び、あらゆるメディアからインタビューや番組出演のオファーが殺到したのだ。
その対応だけでも大変だったのに、年始のアイドル大運動会なる特番では、その年最も世間を沸かせたユニットとして、やはりお呼ばれされた。
718:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:28:38.35 ID:qh1EHTqN0
今西部長に根回しをしたところ、それが耳に届いたのか、直接常務に呼ばれる事になった。
「私も、考えていたスポットが無い訳ではない」
719:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:29:46.54 ID:qh1EHTqN0
「愛していないのか、ですか?」
俺は、美城さんの次に続く言葉を予想し、尋ねた。
彼女はその姿勢を崩さぬまま、沈黙を貫いている――どうやら当りらしい。
720:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:34:17.68 ID:qh1EHTqN0
十中八九、ヤァさんから漏れたのは容易に想像できた。
そして案の定、最も反対の意を示したのは城ヶ崎さんだった。
俺のデスクを悔しそうに何度も叩くので、その上にあるコーヒーが零れてしまったが、彼女は意に介さない。
721:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:36:51.39 ID:qh1EHTqN0
今の彼女を納得させるのは難しい――しかし、反論を封じるのは、それほど苦ではなかった。
「意外と何とかなるもんだって、教えてくれたのはそっちだろう。心配するな」
722:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:42:09.08 ID:qh1EHTqN0
765プロも考えたが、あそこは規模も小さいし、おそらく職場の人間同士の距離感も近い。
ウェットな人間関係というだけでも辛いが、何より聞き捨てならないのは、近く所属アイドルを100人単位で増員するとの噂があるのだ。
あの事業規模で、潤沢なプロデューサーの増員がそう出来るとも思えない。
723:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:44:07.90 ID:qh1EHTqN0
親父の後を継ぐつもりは毛頭無いが、少しは自分に馴染みのある土俵で、何かしら資格は取っといた方が良い。
俺は、ようやく手に職を持つ事の重要性を感じた。
今から国試の勉強をして、いつか受かる日が来るのかと聞かれれば、それは分からない。
724:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:49:00.20 ID:qh1EHTqN0
寒さも少しずつ和らいできた3月、正式に俺の事業一課への転属が決まった。
その日は、近しい間柄であるいつもの三課のプロデューサー陣でヒッソリと祝ってもらったが、話題はLiPPSの事ばかりだ。
もう俺が面倒を見る事の無い子達の話など、したってしょうがないのに、殊更に彼らはその話題を変えようとしない。
725:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:54:19.70 ID:qh1EHTqN0
速水さんを担当してた俺の前任の鬱が回復したっていうから、そいつが俺のデスクに戻るんじゃないのか?
で、俺が一課の高垣さんのプロデューサーになって、ヒゲさんが奥多摩に行くという玉突き人事だと解釈していた。
だから、後任は必然的にそいつになると思っていたんだけど、どうやら違うようだ。
726:名無しNIPPER[saga]
2017/12/23(土) 01:59:21.85 ID:qh1EHTqN0
そして、ようやく――。
ようやく? ――そう、ようやくだ。
その日がやってきた。
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