過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
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992: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2019/10/10(木) 21:11:33.88 ID:0n10eZ/T0
 ピエリリス 短編4
『美味しいご飯』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 目の前に置かれた未調理生肉を見て、またか……と私は思ってしまった。
「えっと、リリスさん? どうかしましたか」
『い、いえ、何でもありませんよ。その、いただきます……』
 私は置かれた生肉を頬張るために口を大きく開ける。
 まずは一口目、生肉特有のちょっとした生臭さが広がる。
 続いて二口目、噛みしめる度にちょっとだけ血の臭いが広がる。
 最後の三口目、正直このままでは辛いので一気に飲み込んだ。
 食べ終わった後、空中でくるりと一回りしてカムイ様に感謝の気持ちを示すのですが、内心口の中に広がる生肉の感触がとてもよくなくて、飛翔時間はちょっとで済ませる。結論から言えば、私は食材だけのご飯に飽きていた。
 そして、嫌がらせなのかどうかわからないけれど私の神殿真横には、皆さんが食卓を囲む食堂がある。声などは聞こえないのだけれど、そこから漂ってくる おいしい香りは毎日の食材食生活の大きな足枷になっていた。平たく言えば、私も調理されたご飯が食べたいのである。でも、そんなことを言うのは叶わないから、今日の夕食はお腹いっぱいという名のご飯拒否をするのでした。
 夜、お腹がくぅくぅと鳴った。昼に食べた生肉の感じが拭い去れなくて、カムイ様にお腹がいっぱいだと伝えた結果だ。音を隠すように星界の玉をギュッと握りしめる。けれど、音は止められない。空腹もそうですが、隙間風に乗ってやってくる料理の香りはまるで禍事罪穢の様で、私の精神はどんどん擦り減っていきます。
『……お腹……空いたよぉ……。何か食べたい……』
 誰に言っているわけでもなく、私は心の内を言葉に乗せた。
 しばらくして浮いているのも辛くなって、私はぱたりと床に伏せた。何か音が聞こえたけれど、気にする気にもなれなかった。そして空腹の所為か、ご飯の香りがとても強くなった気がする。さらにライスに焼いたお肉のセットが見え始めた。どうやら幻覚を見るまでになってしまったようで、私はフワフワとその幻に向けて進み、口を大きく開く。
 別に幻覚なら食べてしまっても構わないだろうと、口を閉じようとしたところだった。
「駄目なの、熱々だからそのままだと火傷しちゃうの。待ってて、ふーふーしてあげるの」
 そう言われて意識が戻ると、コック帽子を被ったピエリさんがいた。ピエリさんはマークス様の臣下の方で、この頃仲間になった人です。その人がどうしてここに?
 そう思っていると、ピエリさんはお肉を一口大に切って、ふーっと冷まして私に差し出して来る。
「はい、あーんなのよ」


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