過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
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993: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2019/10/10(木) 21:16:31.94 ID:0n10eZ/T0
 ニコニコの笑顔で差し出されるおいしそうなお肉。それを私はパクリと口にした。昼間に食べた未調理生肉とは比べ物にならないおいしさが口の中に広がる。一噛みする度に溢れ出る肉汁、お肉本体も柔らかくて食べやすくお肉そのものの味を肉汁と一緒に逃がさない。アクセントにと適量に振られたコショウが食欲を倍増させ、口の中が肉の暴力で支配される瀬戸際、そこに間髪入れずスプーン一杯分のライスが差し出された。ピエリさんだ!
「ライスも一緒に食べるとおいしいの。はい、もう一回あーんなの!」
 私にそれを拒む理由は無かった。あーんとライスを頬張る。星界に光が溢れるような感動が広がった。肉という暴力はライスという抱擁によって幸福へと進化する。濃厚な肉汁の風味がライスと溶け合っていくその流れに、私は久しぶりに料理というもの、いいえご飯という物を取ったのだと理解した。
「まだあるから、たくさん食べるといいの」
 その言葉に素直に従い、私は残ったライスと肉をすべて平らげたのだった。
『す、すみません。その、食べさせてもらってしまって……』
「気にしないでいいの。お料理作り終わってお片付けに入ろうとしたら、お腹が空いたって声が聞こえて、ご飯作って持ってきてあげただけなのよ」
『え、も、もしかして私の声、聞こえていたんですか……』
 迂闊でした。私の声、どうやら神殿の壁を突き抜けて聞こえていたようです。
『そうだったんですね。あ、ちゃんとお話しするのは初めてですよね。私はリリス、この星界の管理と運用を任されています』
「リリスっていうのね。ピエリはね、ピエリっていうの。今、お料理作りを任されてるのよ」
 ピエリさんはその豊満な胸を張って言う。私は色々とうらやましい気持ちになった。
『この頃いい匂いが良くすると思っていましたけど、ピエリさんが作っていたんですね。はぁ、毎日こんなおいしいご飯が食べられる皆さんが羨ましいです』
「ん、リリス。ピエリのお料理食べたいの?」
『そ、それは、出来ればまた食べたいです。こんなにおいしくてちゃんと調理されたご飯は久しぶりで、感動しちゃいました』
 本当に久しぶりなので、私の口は偉く饒舌だった。
 そしてピエリさんは、それに気をよくしてしまう人だった。
「えへへ、そう言ってもらえてピエリとっても嬉しいの! わかったの、明日からピエリがお料理作ってリリスに持ってきてあげるのよ。ピエリとリリスは今日からお友達なの!」
『ピエリさん……』
 私はそう言ってくれるピエリさんにスッと寄り添う。ああ、この暖かさはずっと忘れていたものです。やっぱり、誰かが私のために作ってくれたご飯を食べられることは、とても幸せなことだと。
 そして、私は視線を神殿の入り口に何気なく向ける。するとそこには…カムイ様がいた。
 その手には、未調理の生魚が握られている……。
「リリスさん……。私の持ってくるご飯より、ピエリさんのご飯が……いいんですか?」
 これが後に多くの負傷者を出す料理対決事件に発展するのですが、それはまだ別の話…

 -おわり-


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