982:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/29(月) 23:20:51.49 ID:aAY9Mg7Uo
「はい」
ゆっくりと、車が動き始めました。
運転席側の窓からは、同じ様にゆっくりと動き出す別の車の姿が見て取れます。
……ただ、信号が赤だっただけ。
そんな事にも気が付かない程、私は周りが見えなくなってしまっていたのですね……。
「まさか、冗談を言われるとは思っていなかったので」
反省と、思考の海に潜ろうとしていた私の意識は、
予想していなかった言葉に、空中へと放り出されました。
くるくると回転し、上下左右を確かめるのも困難な状態で、
助けを求められるものは何一つ、誰一人此処には存在していません。
「あ、いえ……」
こういった誤解を解く時に、書の世界ではどんな会話があったか。
考え、考え、考えていると……シートベルトの締め付けが、
私の体の向きが、いつの間にか前から横へとなっていたのを告げていました。
慌てて、離れていた左肩をシートに付け、首だけを横に向けたのですが……。
「……」
とても穏やかな、優しい笑みが目に飛び込んできたのです。
それは、否定の言葉を紡ぐのを躊躇ってしまう程の衝撃で、
私をシートに深く座り直させる程のものでした。
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