975:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/24(火) 23:50:16.19 ID:Wz4dUf4to
「っ……!」
私の言葉を聞いた彼女の反応は、とてもバラエティに富んでいた。
スンと鼻で呼吸をし顔を歪める――臭かったのだろう。
私の顔を見て顔を青ざめさせた――状況を理解したのだろう。
せわしなく視線を彷徨わせた――次にどうするか、考えを巡らせたのだろう。
「――Pサマ! 捨てないで!」
その場に膝をついて両手を組み合わせ、祈られた。
跪いた瞬間、スカートも兼ねているビッグTシャツから、何かが零れ落ちた。
こぼれ落ちたそれ――まあ、糞ですが――が、コロコロと。
転がって、こちらに来――
「っ!?」
――危ない!
咄嗟に足を引き、接触事故を回避する。
もしも私の靴にドライブレコーダーがついていならば。
危機一髪の瞬間を捉えた映像として、お茶の間の肝を冷やしに冷やしただろう。
「そんな……そんなぁ! やむ……やむ!」
奇跡の軌道を描き、靴に糞がつかないと判断して残心をといた私の耳に。
河川敷に打ち捨てられた子犬が、ダンボールの箱の中で鳴いているような。
そんな、悲しみの感情を呼び起こさせる声が、届いた。
……避ける位は、許して頂けませんか?
「ぼくの人生、詰んでるんだよ!?」
膝立ちの状態で、ちょこちょことこちらに近づいてくる。
静止をする暇もなく、またポロリと焦げ茶色の黒い塊が飛び出した。
動き回ると、掃除をする場所がどんどん増えていってしまうというのに。
爆発、炎上……そして、類焼まで起こそうというのか。
「待ってください!」
咄嗟に、大声を出す。
彼女の体がビクリと震え――
――ブプッ!
……んんん……止まって頂けたので、良しとします。
「……私は、貴女を捨てたりはしません」
両手と両膝をつき、四つん這いの状態になっている彼女と視線を合わせるため。
……よし、ここならば……膝をついても汚くはないですね。
しゃがみこんで、不安そうに揺れる彼女の瞳をまっすぐに見つめる。
彼女は息を飲み、私は鼻で臭いを吸い込まないため口呼吸をした。
「本当に……?」
はい、もしも捨てるつもりならば……ですが。
すぐにでも、この部屋から出て行き、新鮮な空気を吸い込みますから。
……とは、さすがに言えなかった。
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