10:オメガ
2016/04/09(土) 18:34:26.16 ID:T6plTjo40
と、まぁ姉妹への挨拶は無事済んだ。だが、私にはまだやる事がある。
姉さんや提督達と別れ目的の人物を探す。彼女は軍港の灯台の上でたたずんでいた。
「ここに居たのね。若葉。」
「何の用だ?愛しの提督とイチャついてれば良いだろ。」
「…あんな風に飛び出していかれてほっとける訳無いでしょ…」
「余計なお世話だ。」
「悪いけど私はお節介な船だからね。迷惑がられようが、人の恋路を邪魔する意地悪な姉が相手だろうがほっとけないのよ。」
「…お人よしだよ、お前は。」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
そして私は若葉の横に立つ。
「…」
「…」
しばらく沈黙が続く。先に沈黙を破ったのは若葉だった。
「なぁ、初霜…私は意味も無くお前と提督がそういう関係になるのに反対しているわけじゃないんだぞ。」
「…へぇ。何かご大層な理由でもあるのかしら?」
「…怒ってるのか?」
「さあね、まぁ今までずっと人の恋愛感情を否定されてきたからね。意地悪な姉に虐げられるシンデレラの気持ちが良く分かったわ。」
「分かった分かった。私が悪かったよ。」
憎まれ口を叩きながらも私が聞いてくれている事を確認して若葉は続ける。
「…私が一番恐れている事はだな…お前が提督と付き合うのは良い。だがこのご時勢だ…どちらかが先に死ぬ可能性もある。それを受け入れる覚悟がお前達にあるのか。と、心配になってな。」
「…」
「…大切な物を失って壊れる様な事にはなって欲しくない。お前にも、提督にも…もし後追い自殺なんてされて困るのはこっちだしな。」
「…私もそれについては告白前に何度も考えたんだけどね…」
私は言葉を紡いでいく。
「…覚悟はあるわ。若葉の言うとおりこのご時勢だからね、どっちかが先に死ぬかもしれない。」
もっとも、もしそんな事になったらワンワン泣いて数日は塞ぎこむだろう。が、流石に若葉の言う通り後追い自殺なんて馬鹿な事はしないと思う。多分。
私は言葉を続ける。
「でも、だからこそ私は生きているうちに成せるべき事をしたいのよ。若葉も雪風ちゃんの最期は聞いてるでしょ…不沈艦を謳われた彼女も日本に帰還する事は出来なかった。人や船の最期って本当にあっさり訪れるからね。もしかしたら私も次の出撃で機雷踏んで沈むかもしれないし、深海棲艦を狩りつくして戦争を生き延びても帰還途中に事故で死ぬかもしれない…」
余談だが、雪風改め丹陽は戦後しばらく台湾で旗艦を務めていたが退役にあたり日本へ返還される話があったらしい。だが、直前で台風による損害で破損。そのまま現地で泣く泣く解体され錨と舵輪だけが日本に帰って来たそうだ。スクリューは台湾で保管されているらしい。もっとも以前雪風本人に無念ではなかったか?と聞いたら「日本も台湾も雪風にとっては大切な祖国ですから結果的にはこれで良かったんですよ。」と言っていたが。
「…でも、死ぬ時に後悔はしたくないのよ。これは一度前世で沈んだからはっきりと言えるわ…あの時は後悔と無念しかなかったから。」
正確には私の最期は大破着底だがあの時は竜骨がへし折られ、船として死んだも同然だったから沈んだようなものだ。
「それがお前の答えか…」
「ええ。もちろん死ぬつもりは無いけどね。」
私もあっさり沈むつもりは毛頭無い。仮にそうなりそうでも前世の様に最期まで抗いきってやるつもりだ。
「…」
私の言葉を聞いてしばらく黙っていた若葉だが意を決したように口を開いた。
「お前の覚悟は分かった。提督と付き合うことを私も認めよう。」
「…ありがとう。」
「ただし条件がある。死ぬなよ、お前達二人が生きて幸せになる事が条件だ。」
「前にも言ったでしょ。私はこれでも幸運艦なのよ。」
「余計なお世話だったか?」
「いえ、若葉の言う通り必ず生きて提督と添い遂げる。それを改めて決意させてもらったわ。」
「そうか。悪くない心意気だ。」
と、言って若葉は笑った。
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