谷間の百合 (オリジナル百合)
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27: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 15:49:47.07 ID:Li1QhE+X0
持ってきていたお茶を二人で分け合って飲んだ。
それから、バケツに水を汲んで柄杓で水をすくった。
墓石に水をかけて、いくつもあるので数十分くらい要した。
墓石に彫ってある子どもたちの名前を指でなぞる。
みな、私より年下だった。
この村の子どもの中でも最年長だった私は、みんなよりも免疫力が高かったため生き残ったのではないかと若先生は言っていた。
子ども達の賑やかな声が消えたこの山間の村は、今はどこもうっそうと茂る森のような不気味さがあった。


小さなお堂の前に座った。そこから、村が見渡せるのだ。
遠い山々は緑がかすんで青く見えた。
あの向こうには、都会が広がっている。
この村からは何も分からない。

「ナツ、北の方は寒いの?」

「まあ、ここよりは。でも、この時期は暑いですよ」

「暑いんだ、知らなかった」

「村から出たことがないんですか?」

「そうだよ。大人になったら出ようと思うんだけどね」

「今は?」

「今? 子どもは危ないから出してくれないよ」

大人たちが昔から口を酸っぱくして言う。
子どものうちは村から絶対に出てはいけないと。
今思えば、それはこの風土病が蔓延しないためだったんだろう。

「ミソラは、大人になればこの村を出て行くのですね」

「え、ナツは?」

「わかりません」

「ナツも一緒に行こうよ」




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