35: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 17:14:06.41 ID:Li1QhE+X0
「ナツ」
ナツはベランダにいた。
カーテンが踊っている。
今夜は風が強い。
「寝ないの?」
いつもなら、私より先に布団に入るのに。
村は夜になると街灯が指で数える程灯るだけ。
上を向けば満天の星空が広がるけれど、彼女はそれに目もくれず、下を向いている。
スリッパが一つしかないので、ベランダの入り口からナツを再度呼ぶ。
「無視しないでよ」
「ミソラは、怒らないんですか」
「怒る?」
「母はよく怒りました。物を壊したり、動物や人を殴ったりすると。それは、やってはいけないことです。当たり前のことですが」
「もしかして、怒られると思って、外にいるの?」
ナツは小さく頷いた。
「怒らないよ」
裸足のままベランダに出て、ナツの背中側から腕を回した。
ナツの肌は湯冷めして少しひやっとした。
「だって、私はあなたのお母さんじゃない。妹だもの。それに、まだ、本当の妹じゃないし。でも、借りに私があなたの本当の妹だとしたら……」
私は強く抱きしめた。
それから、彼女をできる限り優しく振り向かせる。
頬にキスをした。
「こうするかな」
「ありがとう? えらい? 嬉しい?」
その三つを口にする彼女は、まるで言葉とその意味を覚えたばかりの子どもだった。
「どれも違うよ」
「違うんですか」
「うん」
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