4: ◆Freege5emM[saga]
2016/09/19(月) 23:56:05.27 ID:YmRrF0g1o
●1-03
不意に、指先にしびれ――いや、違った、バイブの振動――を感じる。
手に持ってたスマホに着信が入ってる。
着信元は……
「にゃーっはっはっ、プロデューサー? 思ったより、遅かったね♪」
タップと同時に、あたしは叫ぶ。
待ちかねてたんだ。キミのコト。
今日の夕方、第4代シンデレラガールを決める総選挙の結果が発表された。
1位は周子ちゃん。2位はみくちゃん、3位は楓さん、4位は夕美ちゃん。
あたしは5位だった。
「いやー、ね、ちょっと、その……ごめんね? そっちに、いられなくて」
選挙では、1位から5位までのアイドルで期間限定ユニットを組むことになっていた。
だからギリギリ滑りこんだあたしは、諸々の準備のために、
みんなと打ち合わせとかしなきゃいけなかったハズ、なんだけど。
「……プロデューサーったら今回はいつもより頑張っちゃって、
周子ちゃんと夕美ちゃんと二人も上位にねじ込んで、とっても忙しい時だってのに……怒ってる?」
あたしは、ソレを全部無視して逃げ出しちゃった。
「あぁ、ごめんごめん、キミの担当のなかでは、あたしもいたね。忘れてたわけじゃないよ。
ただ……そこにいるのが、ちょっと辛いかな、なんて」
あたしのプロデューサーは、今は担当アイドルが3人いる。あたし、夕美ちゃん、周子ちゃん。
200人近くいるシンデレラガール候補のうち、担当3人を上位1位、4位、5位に並べたんだから、
プロデューサーの評価は今回の選挙でうなぎのぼりだ。
あたしは、それに水を差しちゃってるんだけど。
「あたしがいきなりいなくなってキミに心配かけるの、結構久しぶりな気がするー。
前は今ほど忙しくなかったから、気楽にそーゆーコトができたよね」
今頃は、みんなで選挙の大健闘をお祝いしたり……って、やってるハズだったんだけど。
あたしは、それもぶち壊しにしちゃった。
「あー、安心してね。お仕事が辛くて失踪したことは、ほとんど無いから」
プロデューサーと出会って、アイドルはじめてからは、辛いコトとかしばらく忘れてた。
好奇心を刺激されっぱなしで、一番しんどかった退屈はすっかりアタマから抜け落ちてた。
クッタクタのヘロヘロにされるレッスンさえ、また自分にできるコトが増えると思えば楽しかった。
あとは色んな女の子の匂いをハスハスできて嗅覚の保養にもなってた。
「じゃあ、なんであたしは失踪してたんだって?」
なんでだろうね、ホント。
もしあたしが、絶対にイヤなお仕事だったら、誰にも見つからないトコロまで逃げちゃう。
でもあたしは、プロデューサーに捕まえてくれる位置にしか逃げなかった。
プロデューサーに探し出されて、叱られて、子猫みたいに首根っこつかまれて、
お仕事に引戻されるのが……嬉しかった。そんなだからあたしは、
プロデューサーが引き戻してくれればギリギリお仕事に間に合うように隠れてた。
でも、今夜はちょっと違う。
「……本気でやって負けちゃうのって、こんなに悔しいんだね……?」
スマホのモニタを曇らせたあたしのつぶやきは、打算半分、本音半分って具合だった。
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