5: ◆Freege5emM[saga]
2016/09/19(月) 23:56:40.55 ID:YmRrF0g1o
●1-04
「――じゃあ、ね。『あたしが呼んだら、今すぐきてね♪』なんて。にゃははっ」
あたしは一方的にプロデューサーとの通話を切った。
顔からスマホを離すと、耳殻に触れる部屋の空気が冷たい。
長電話してると、意識が聴覚にばっかり集中して、
世界があたしとプロデューサーの声だけになった気分になるけど、やっぱり錯覚だった。
来てくれるかな。叱られちゃうかな。怒られちゃうかな。心配してくれるかな。
周子ちゃんと夕美ちゃんをほっぽり出して。
いつから、プロデューサーのコトを独り占めしたいと思うようになったんだろう。
どうせしばらく眠れないだろうし、
プロデューサーがここに来てくれるかどうか考えるよりはマシだろうから、考えてみる。
プロデューサーと出会ったばかりの頃、あたしは自分のことを『フツーのJK』なんて言ってた。
真っ赤なウソだ。フツーのJKは自分用のラボなんか持たない――そもそもアイドルにもならないか。
あたしとプロデューサーとの出会いからして、フツーとは程遠かったね。
プロデューサーがロケ隊引き連れて、街角でアイドルの撮影指揮してて、
(ちなみに撮られてたのは夕美ちゃんだった)
『……キョーミ深いの、発見〜』
そこを通りがかったあたしは、なんとなく足が止まってしまって、
あたりをスーハースーハーしたりじーっと見つめたりしていた。
そうやってあたしがウロウロしてると、プロデューサーが声をかけてきた。
『ねぇ、なにしてるの――ふーん、アイドル番組の撮影?』
へぇ、じゃあ、あの子がアイドルなんだぁ――というと、聞こえちゃったのか、
夕美ちゃんにほんのちょっとだけ苦笑いされた。
『そーかー……じゃあ、例えば……
“みんなー、こんにちわぁー♪
今日は志希ちゃんが、みんなの視覚野に刺激的なヤツを焼き付けて、
夜も眠れなくさせて、あ・げ・る〜♪ チラッ☆”
さっきマイク持ってた子、こんな感じだったかな。
男子の視覚に一過性の刺激を与えて、充足させるヤツだよね。
やってみたら案外ソレっぽいかもー』
夕美ちゃんの苦笑いが、引きつった。
『で、あの子がアイドルなのは分かったけど……キミは? なんかイイ匂いするけど、ナニモノ?』
あたしは、プロデューサーという職業のヒトを初めてこの目で見て、鼻で嗅いだ。
『あたしの足を止めさせた匂いは……ふんふん、クンカクンカ、スーハースーハー……ははぁ。
志希ちゃん、ピーンと来ちゃったぞー♪』
未知はあたしを駆り立てる。
心地よく感じる、でも分からない……それが、面白い。
『キミの汗! キミ、いい子でしょ。匂いでわかるよ!
いい汗かいてるってことは、シゴト楽しーんでしょ?』
あたしが本気で信じていて、でもきっとみんなは信じないだろう理屈。
そんなコトバに、プロデューサーは力強く頷いた。だから、あたしは……
『じゃあ、あたしにもアイドル教えて教えて♪ 面白いコトなら、あたしもデキると思うな!』
ホントどこがフツーなんだ、あたしったら。
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