255: ◆GXVkKXrpNcpr[saga]
2016/12/31(土) 15:42:24.02 ID:eFXi0ApIo
「お嫁さんになって近くで応援するんだって、小さい頃から思ってた」
「うん」
「どうしようもなく憧れてて、でもどっかでわかってたんだ。住む世界が違う子だって」
「事故があって………腕をやられたって聞いて真っ青になったよ。
大好きなバイオリンを弾けない恭介があたしはすごくかわいそうで」
「かわいそう、だったけど…………でも実際のところは毎日お見舞いに行けて嬉しかったな」
「誰はばかることなく二人きりで会えてこっちはウッキウキだよもう。
治らないケガだなんて知らなかったからさー」
ステージ上の上条恭介はもう幼い少年ではなかった。大けがを奇跡的に乗り越えて挑戦したコンクールの最終審査、実力を出し切った彼は応援に来ていた志筑仁美と目を合わせて穏やかに微笑んだ。
「仁美でよかった、本当に。ぴったりなんだよ」
言い訳でも僻みでもないよ、と前置きしてさやかは続けた。
「仁美が恭介を好きだって聞いた時は、こう目の前が真っ暗になったんだけど」
「絶対にかなわないってわかったし。すごくしっくりきたし。
恭介のこと一番わかっているのはあたしだって自信があったんだけど
そんなのただの勘違いだった」
「なんか、淡々と話すんだな」
「熱く語って欲しい?」
「そうじゃないけど」
握りしめられた手を見ると少し白くなっている。
「恥ずかしいんだ」
「何が?」
「こんな風に頭でわかってても、仁美にあたしの恭介を取られちゃった、ってなった自分が恥ずかしい。
みんなに八つ当たりしてた自分が恥ずかしい。なんにもわからず浮かれてた頃の自分が恥ずかしい。独りよがりでもういろいろと恥ずかしい。
あんたに世話を掛けさせたのが恥ずかしい」
「………ちゃんと整理がついているんだな」
「そうみたい」
「そっか……じゃあ、さ」
杏子は握られた手をしっかりと握り返して心で話す。
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