マミ「QBかく語りき」 QB「君らしいね」
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257: ◆GXVkKXrpNcpr[saga]
2016/12/31(土) 15:50:25.55 ID:eFXi0ApIo

朗読台で父が聖書を開いている。


「マタイによる福音書、第十四章十六節から──イエスは舟から上がって………」


日曜朝の礼拝時、家族以外誰もいないが父はきっちりと時間になると始める。どこかさびれた聖堂。杏子もモモも毎日掃除を手伝っているのに。

クリスマスが近い。


………for the Load, and the glory, the glory of the Load,………


もうあんな風にクリスマスを祝うことはないんだろうな、と思う。

教会を訪れる人が減っても日々の雑務は減らない。休日ともなると杏子も朝早くから手伝いを諸々こなす。ビラも配るしボランティアにも参加する。


(お腹が空いた)


空腹には慣れなかった。いっときましにはなることはなっても、食べるまでそれは決しておさまらない。

杏子は歯を食いしばり、両手でみぞおちのあたりを押さえた。妹はもっと辛いはずだ。あたしよりずっと小さいんだから。


(イエスさまは何千人もの人を食べさせてくれたけど、神さま。あたしはお腹が空いています)


どうしてうちはこんなに苦しくなったのか、と母に尋ねたことがあった。


「お父さんには考えがあるの」


それまで属していた教派を抜けて独立したらしい。何か教義の解釈について意見の食い違いがあったとかなんとか。父は異端となった。教会を訪れる信徒は激減した。

両親にしてみれば子供たちが飢えているなんて思ってもみなかったかもしれない。時間になればきちんと食事は出た。ただ、育ち盛りの子供たちにとってはその量は満足のいくものでは決してなかった。満腹になれるのは学校で出る給食の時だけだった。

食べ物のことを考えるのはつらかった。


「みんなが親父の話を真面目に聞いてくれるようにってのがあたしの願いだった。
単純に信徒が減ったからうちが貧乏になったって思ってたから」


空腹に苛まれる小学生の自分を見つめながら杏子がさやかに説明する。


「でも……考えてみるとさ」

「教派から独立、ってか破門されたんだけどそれは覚悟の上じゃん」

「信徒が減るのはわかってるんだから、その寄付だけで生活できるなんて甘いことは考えてなかったはずだ。
お袋は昼間働きに出てたよ。忙しそうだったな、親父のアシストも家のこともやるから。
親父はやさしい人だったけど……そんで毎日一生懸命教会のことをやってたけど……それじゃ食えない」



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