53:名無しNIPPER[saga]
2016/12/04(日) 18:24:00.76 ID:p8lNJQva0
「ホント? いやー、私も実は班の人とはぐれちゃってるんだよねー、色々目うつりしてたらいつの間にか。あははー」
「俺も同じだ。ついでに言うと迷ってる。集合場所は分かるか?」
「うん! あ、でも、説明だけじゃ心配だなぁ。私はまだ見たいところあるし……うーん」
「…………まあ俺はここで待ってても」
「じゃ、私と一緒に行こ?」
「え?」
必死に会話をつないでいると、話がとんでもないところに到着した。評判の並木と? これまでほとんど関わりのない俺が?
「だいじょぶだいじょぶ! ちゃんと最後は集合場所に案内するし、時間には間に合うようにするし、それに……絶対楽しいから!! ほらほらはやくー!」
踵を返し、並木はずんずん歩きだす。俺は突然の事態に戸惑いながら必死に付いてゆく。
結果からいえば俺たちは間に合わず、二人揃ってしこたま怒られた。男女というのもあっただろう。
らしくもない目立ちかたをした俺は、旅行の間中それをネタにされ続け、後の学校生活でも侮蔑と好奇と一握りの尊敬を受け続けた。
――で、その後並木とは、なんと何もなかった。
時たま顔を合わせたら手を振り合うくらいだが、まあそれでも今となっては十分な栄誉だろう。
なんでこんなことを思い出したかというと、先日彼女が旅行番組のレポーターとして、あの修学旅行で行ったところを訪れていたからだ。
「――私も、修学旅行で来たことあるんですよ! で、集合時間に間に合わなくて、怒られちゃって……」
そんな風に彼女がいうと、ああ、確かにあの時間は存在したんだなと、胸にこみ上げてくるものがあった。
今度、同窓会でも開いてみようかな。今は携帯もあるし、連絡はどうにでもなるから。
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