4: ◆NERDVAqS3I
2017/01/16(月) 22:59:34.39 ID:6j4Pz0iq0
「はぁ……たしかにそうですね。最近はラジオのパーソナリティをしたり、ドラマにも出たり。いろんな方向を模索してる感じですね? そろそろ方向性を絞ってもいいかもしれないですね」
「個人的にもう少しゆっくりさせたいところなんですが……、グラビアなんかの仕事も安定してありますし。正直僕もびっくりしたんですが、役者としても結構地力ありますしね」
「なんていってると、あっという間に埋もれていく」
「!」
「なんてことを言われたんですか?」
本当に勘が鋭いなぁと苦笑する。実際言われたことだ。
しかし、今の俺にとっては人気が出ても落ちても都合がいいのだが。間違って口に出そうものならはたかれそうだ。
「私は一介の事務員ですから、口出しは出来ませんけど。一度美優さんと話し合ってはいかがです?」
「ん……。そうですね、そうしてみます。今まで舞い込んできてた仕事に手いっぱいで話し合う余裕なかったですからね」
「アイドルとのコミュニケーション不足は不和の元ですから。気を付けてくださいね?」
「ええ。アドバイス、ありがとうございます。……、そろそろ美優さんの迎えの時間ですね。ちょっと空けます」
そういって席を立つ。
「そのまま直帰で?」
「時間は……もう四時半ですか。そうですね、そうします」
「分かりました。お疲れ様です」
「はい。では」
千川さんと話しているとどこからどう弱みを握られるかわからないので、かなり無理やりだったが逃げることにする。今日は珍しく事務所に他のプロデューサーもアイドルもいない。入れ替わりで誰かくるのかもしれないが、それまでは俺に話しかけてくるだろう。普段ならうれしいが今悩みを抱えてる状態では勘弁願いたい。
荷物を取りまとめて、PCの電源を落とす。コートを着込んでもう一度千川さんにあいさつした。
「それじゃあ、お疲れ様です」
「ええ、」
そういって事務所を出た。
千川さんが口を動かしていたがなんて言ったのかは聞こえなかった。まあ多分「お疲れさまでした」とかだろう。
「『美優さん』ですか。……へえ?」
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