3: ◆NERDVAqS3I
2017/01/16(月) 22:59:07.47 ID:6j4Pz0iq0
だからこそ、アイドルだなんて世界に足を踏み入れる気になったのかもしれない。
最初は戸惑うことも多かった。俺が突拍子もない仕事を持ってきて美優さんを困らせたことも数あったし、美優さん自身がどう動いていいのかわからず結果的に相手先に迷惑をかけてしまうこともあった。だが段々とキャリアを積み、実績を重ね、気づけばはや数年。じわじわと知名度を上げていき直近で行なわれたプロダクションの総選挙では3位になるほどの人気を得た。
仲のいいアイドルも増えたようで、高垣さんや川島さんとお酒を飲みに行っている姿をよく見かけるし、事務所では年少組の世話をしている。
最初のころなんかは、見知らぬ人が見れば怒っているとすら取られていた表情もすっかりなくなり、笑顔もよく見る。自然に出てきているという感じだ。
そう、本当に楽しそうなのだ。アイドルという仕事が。ここにいることが。
だからこそ、身勝手に動いて奪いたくはなかった。
アイドルとプロデューサーが付き合っている例はなくもない。訳のわからないことにファンに認められているアイドルもいるし、外にはばれないようひた隠しにしている奴もいる。もしかしたら、本当に二人だけの秘密にして付き合っている例もあるのかもしれない。
俺としてはそんなリスクは取りたくない。だが、美優さんは? まだまだ、この世界にいたいだろう。
俺からやめてくれと押し付けることはできない。言う権利が存在していない。
俺は、俺たちは。
「……はぁ、どうするべきかねえ」
「どうかしたんですか? Pさん」
声に出てしまっていた。前の机にいる千川さんに声をかけられる。とはいえ人に相談できる内容ではない。
「あっ、すみません。声に出てましたか……なんでもないですよ」
「そんな溜息つかれて、なんでもないと言われても」
「……み、」
「み?」
無意識で美優さんと呼ぼうとして思いとどまる。元々社内の人間は苗字でしか呼ばないよう心がけている(城ケ崎姉妹や年少組などの例外はある)ので一発で怪しまれるだろう、千川さんならなおさらだ。悪魔のように勘が鋭いのだ。
「……三船さんのこれからについて考えていたんですよ。本格的に人気が出てきましたからね。上司からもちょっと圧力を感じますし」
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