勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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22: ◆qR6TCtkvbo[sage]
2017/03/15(水) 17:01:57.08 ID:Cyt3wLgz0
カケル「(ここまで来れば、大丈夫かな)」

陽が落ち始め、あたりを茜色に染め上げようとしているころ。
寂れた路地の一角にある廃墟じみた建物へと俺は駆けこんだ。
小屋そのものはシンプルな作りだ。構造は木材で囲まれており、正面にある扉と裏口がひとつずつ。
正方形な空間に木箱が3つほど並べられているだけの非常に手狭なところであった。

しかし、なんだったんだ、あの詐欺集団は。
最後の方は、フランと呼ばれていた女はすごい物騒なこと言いだしてるし。サイコ女こわい。

ミラ「カケルっ⁉︎」
カケル「ん?」

なんということでしょう。
呼ばれた方へ注視すると木箱によりかかるように身体をロープで縛られ、ガタガタと震える幼馴染がいる。

ミラ「助けにきてくれたのね!」

why? 意味がわからない。俺はたまたま詐欺集団から逃げてきただけだというのに。

ミラ「カケル、私のために……」

ぶつぶつと、不穏な言葉を呟かれている。音がない環境というのはそれだけ、小さな音でも広いやすくなり、響いてしまっていた。

ごくり。

カケル「ミラ……」

半ば呆然とした声で名前を呼んでしまっていた。理由を考える前に開いた口がふさがらない、とはこの事か。誰のためだって? 瞬間的にありえないと思った。

室内を包む、重い、重い、沈黙。
そして、頬を染めるミラ。

ミラ「嬉しい……って――」

はっとしてミラは目を見開く。奇妙な間があった。

ミラ「でも、今のカケルじゃ……だめ、逃げて!」

そう叫び声をあげた瞬間。

ぎぃぃぃぃ。

ドアがひとりでに開いた。

ミラ「くっ……!」

なんとかロープをゆるめようと身体をくねらせているのだろう、左右に身体をふっていた。芋虫を噛んだ表情で開いたドアを睨みつけている。

俺からは、扉のふちを掴む黒い手袋しかいまだ視認できない。
手が部屋の中にはいり、さらに黒いブーツがドン、と小屋の木床を踏む。
ゆっくりとした足取りで、その人物はランプを片手に持ち扉を閉める。
全体を黒い色で統一した着衣に身を包んでいた。

カケル「(なんだこいつ)」

フードを深く被っているので表情はうかがいしれないが、ミラの慌てようを見るに縛ったのはこいつで間違いないだろう。

………でかした! ざまーみろっつーんだよ!ミラさん苦しそうで今夜は飯がうまい!

ミラ「お願い! そいつはなにも関係ないの! 逃してあげて!」

スッ

フードを下げて顔を現した容貌に俺は、絶句した。悪鬼としかいいようがなかったからだ。
肌は緑、髪は乱れ、禿げ散らかした頭髪は清潔感のカケラも感じさせない。口からは牙が飛び出し、目は飛びでて俺とミラをぎょろり、とゴミを見るような一瞥した。

カケル「(こいつ……ゴブリンじゃないか!)」


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