35: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/03/20(月) 00:27:05.08 ID:kPcLir3I0
フラン「お礼ぐらい言ったらどうですか」
渋々といった感じではあったが、礼節は厳しく教育されているのだろう。ユミルは形式上の手続きかのように慣れた仕草で膝をまげると俺に礼をした。
ユミル「助けていただいてありがとうございました。こ度のお礼は――」
カケル「いい」
ユミル「えっ?」
きっぱりといらないと言った俺にたいしてユミルは目を丸くしている。そもそも助けるつもりはなかったんだし、余計な関わりはめんどくさそうだという判断なのに、そんな意外そうな顔をされても困る。
ユミル「で、ですが、王族が礼もしないとなると……」
やはり、めんどくさい。王族なんてことは俺個人にはなんの関係もないし、受けとらなければ困るというのはそちら側の都合だ。
そんなものはお礼ではない。
仕方なく、鞄から一輪の黒百合を取り出し、差し出した。
ユミル「は、花……?」
カケル「どうぞ」
ユミル「あ、ありがとう? でも、なぜ……」
カケル「これでおあいこです」
ユミル「へ?」
カケル「受け取ってくれました。なので、お礼はいただきました」
この花は道中、何の気なしに摘んだ花である。もちろん、価値なんかない。
本の押し花として使おうかと思っただけだ。
多少強引かもしれないが、王族が庶民の価値のない花を受け取ってくれたのだ。それも1つの畏れ多いことなんじゃなかろうか。
ユミル「は、はぁ?」
ジョル「姫様、カケルはの。それでお礼をチャラにしてくれと言うとるんじゃよ。カケルにとって人助けなんて日常茶飯事なんじゃろうて」
勝手なこと言ってんじゃねえジジイ。
ユミル「そんなにも人助けを?」
ミラ「――はい。それは幼馴染である私が側で見てきました。保証します」
ユミル「……そう。では、カケルよ。そなたの心意気を汲んでお互い様ということにしましょう」
いちいち堅苦しいね、姫様ってのは。
庶民に対してある程度体裁をとらなきゃいけないってものも考えようだ。これでは息苦しいと城から逃げ出したとしてもわからないでもない。
俺ならやだね。生まれてからこんな生き方を強要されるのは。
だからなのだろうか、俺は立ち上がり、この時、微笑みを浮かべて――。
カケル「気にしないでくれ」
ユミルのほどよい大きさの手をとり、そう、思ったままを口にすることができた。
ユミル「あ……」
虚をつかれたユミルの頬に赤みがさす。
フラン「あらあら……。男前だけじゃないんですね、勇者さま」
ミラ「そ、その顔はめったに見せないのに……っ!」
外野がなにかうるさいが、俺は今もはやく家に帰ってグータラしたい。これだけである。
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