勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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42: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/03/20(月) 17:10:57.12 ID:kPcLir3I0
- バンドギア城 迎賓室 -

キャロル「まったく! お嬢様はなんでいつもいつもそうなんですか!」
ユミル「うるさいなぁ、だってお見合い嫌なんだもん」
キャロル「国際問題に発展するかもしれなかったんですよ⁉︎ ――聞いてますっ⁉︎」

メイド服姿のキャロルはユミルに耳タコができるまで説教をしていた。
このキャロルという女の子は、名家出身で代々王族に仕えている使用人である。

フラン「あなたも苦労するわね」
キャロル「ふ、フラン様。此度のこと、申し訳ありませんでした。あ、あの。それでなんですが、本国には――」
ユミル「なんでフランはこっちにいる間の教育係てだけで偉そうなんだよ。ボクはお姫様なんだぞ」

深々と頭を下げるキャロルに、クスッと、フランは上品な仕草で口元を隠して笑う。

フラン「安心して、私は何も言うつもりはないわ。勇者さまに怒られてしまいそうだし」

勇者、というキーワードにユミルとキャロルが反応する。

フラン「あぁ、ゴタゴタしてたからうやむやになってた? ユミルがさっき会った彼のことよ」
ユミル「――うそぉ⁉︎ 勇者⁉︎」
キャロル「ついに精霊神様のお眼鏡に叶う者が現れたんですか⁉︎」

城に歩くまでの道中、数十分ほどであるが共に歩いたカケルの姿をユミルは必死に思い出そうとする。身長はあったが顔は、童顔なのか、かわいらしい感じがしていた。
彼が勇者だと思っても見なかったユミルは唖然とした表情を浮かべていた。
助けてもらいはしたので、腕利きなのかも、とは思えるが、すべての国にとって最重要人であるおとぎ話の存在に会っていたとは夢にも思わなかったのだ。

フラン「彼は間違いない。今頃は王様と謁見しているはずだと思うわ。あ、そうだ、姫様、彼から花をもらってたでしょ?」
ユミル「あぁ、えぇ」
フラン「キャロルにも見せてあげたら?」

変装用に着ていた上着の内ポケットから黒百合の花をとりだし、キャロルに見せる。

キャロル「これって、なかなか見れない花ですよ、お嬢様」
ユミル「え? そうなの?」
キャロル「はい……えぇと、たしか見つけた者は精霊に愛されていると言われるぐらいには」
ユミル「えぇ? そんなに貴重なものなの?」

戸惑う2人にフランはしたり顔で続ける。

フラン「その花の花言葉はね――恋よ。一目惚れされたの?」

しばしの間をおいて、意味を理解できたのか、ユミルの瞳が大きく揺れたのがキャロルは気がついた。
長年の付き合いだからこそわかるが、ユミルはまだまだ子供でいたいと思っている。しかし、国の情勢についても理解していないほど子供なわけではない。
だからこそ、ユミルの中でお見合いに向き合う気持ちと頭での理解とで、折り合いがつかないということがわかる。

きっとユミルはこう考えているだろう。
もしかしたら私は、恋を知らないまま一生を終わるのではないか、と。
キャロルはユミルが政略結婚の道具として心が凍ってしまうのは、できることならなんとか避けたいと思っていた。

キャロル「これって、きっと運命ですよ、お嬢様!」
ユミル「え、えぇ?」

満更でもなさそうなユミルにキャロルには一抹の希望が見えた気がした。
もし勇者が言い伝えによるほど立派な人ならば、きっとお嬢様のこともなんとかしてくれるかもしれない。
そう、淡い期待が渦巻いて、溢れるのを止められそうになかった。

カケルの知らない場所でも人々の心情は動いている――。


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