61: ◆y7//w4A.QY[saga]
2017/03/23(木) 12:13:23.05 ID:7IE/7chP0
荒れ狂った暴虐の塊に、気がこれでもかと練り上げられているのは素人目に見てもわかる。
ドォーン、ドォーン。
衝撃波がソニック・ブームを生み音速の壁を貫き破る不特定な音が二回、鳴り響いた。
装飾品や胴回りが数十メートルはあろうかという巨大な柱たちでさえ、圧に耐えられず、ガラガラと音を立てて崩れはじめていた。
目を閉じて、額から汗をたらしはじめたカルアを前にして、それでもなお、トモエの表情からは恐れを読み取ることができない。
ベニ「ミラ、防壁はることはできる?」
ミラ「はい!」
ベニ「最大級の魔法陣を展開して。アレは戦術級の魔法だから私も、防げるかちょっと自信ない」
戦術級と言うベニの言葉に戦慄する。それは、一度発動すればひとつの都市が滅ぶと言われる威力がある。いわゆる、戦争なんかの大規模戦だとしても戦術のひとつとして通用しうる威力を誇る魔法のこと。
それが、今まさに対個人で使用されようとしている。
ベニの魔法陣が風の勢いを弱めているおかげで、なんとか地に足をついて立っていられるが、まだ激しくなると、隅まで吹っ飛ばされるんじゃないかと身構える。
ミラ「王様は⁉︎ 城は大丈夫なんですか⁉︎」
ベニ「城の外壁には、戦術魔法を遮断する耐圧、耐爆、洪水に特化した結界が貼ってある。けど……」
ミラ「――けど?」
ベニ「内部から発動されたらどうなるかはわからないし、王様も無事じゃ済まない」
ば、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ! 止めないと!
くらり、と視界が揺れるのを感じ、状況についていけず、ついに俺が防衛本能として気絶することを選んだかと思えば、そうじゃなかった。
俺は今、プリンの上に立っているかのように重量を感じることができなかった。ゆっくり床が溶けてなくなり、不安定な場所にいる感覚。
地震が起きているとわかった。
大地が、城が、これから起きる厄災を前に震えているようだ。黄金色に輝く粒が、雪のようにひらひらと舞い降る。
カケル「(これはミラが魔法の発動する直前と同じ……いや、もっとやばい!)」
ベニがブツブツと詠唱とはじめると同時に、ミラも集中力を高める瞑想にはいった。粉塵を巻き込みまともに目を開けるどころか、顔を正面に向けられないほどの風が吹きすさぶ。轟音を響かせて風の渦ができ、破砕音と共に巨大な十字架ができあがる。
トモエ「十字架なんて趣味悪いわぁ。まだぁ?」
場にそぐわないのんびりとした声が耳にはいる。待ちくたびれたと言わんばかりに、うんざりしているといった感じに聞こえた。
何食わぬ顔で立っているのはありえない。昨日のゴブリンなら巻き起こっている風だけでとっくに絶命しているだろう。
瞬間、視界の全てを覆うほどのまばゆい閃光があたりを真っ白に染め上げた。目をつぶらずにはいられないほどの強烈な光だ。
音。音。音。
風で持ち上げられたような、ふわりとした無重力の感覚も束の間に破壊音の蹂躙が遅れてこだまする。
ベニ「ぐっ」
ミラ「きゃぁっ⁉︎」
二人の叫び声で、ついに極大魔法が放たれたのだと悟った。なにかできることがあれば自分の命を守るためにやりたいが、俺にできることはなにもない。
ベニとミラに無数の切り傷ができたのか、血飛沫が俺の顔にかかる。
ミラ「こんなの無理です!!」
ベニ「倒れられると困る! 受け止めようとしちゃだめ! 私に合わせて!」
ザァァァ――。
ベニが耐えるように苦悶の表情を浮かべたまま杖をふりかざすと水のヴェールがなにもない空間からあらわれ俺とミラと王様を前に半透明の壁ができあがる。
ベニ「我が盟約に従い、水の精霊よ。清らかな水を集い、我らを守り給えっ!!」
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