勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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74: ◆y7//w4A.QY[saga]
2017/03/25(土) 12:01:21.42 ID:FmZTuUXi0
ベニ「――今、謎が解けた」
ミラ「え……?」
ベニ「あの女は魔に属する者。それは疑いようがない。でも、あの感じ方は異常」
ミラ「たしかに……私も気持ちよかったけど、あそこまでは……」
ベニ「今のは聞かなかったことにする。おそらく、私達の高ぶりから推測するにサキュバスの類。それもかなり高位な存在」
ミラ「あ、はいっ、す、すみません……」
ベニ「カケルはあの女よりも高位な存在。だから、抗えない」
ミラ「えーと? でもそれだったら、私達も同じようになるってことですか?」
ベニ「そうだけど、厳密には違う。カケルの存在を強く感じるには、相手もカケルの実力に近くなければならない」
ミラ「どうして?」
ベニ「強くないと、相手との実力差を実感できないから。近くなれば近くなるほど、カケルとの力の差を肌で感じる。全体像が見えてしまう」

ゴクリ、とミラが唾を飲み込む。

ミラ「それじゃ、一般の、例えば村にいた人たちがカケルに陰口を言ってたのも」
ベニ「魂レベルで凄さの片鱗がわからないから。蟻が空まで突き破る大きさの巨人を見ても、なにか壁があるとぐらいしか認識できない。肩書きがあれば別だろうけど」
ミラ「じゃ、じゃあ、カケルってあいつよりもさらに強いってこと?」
ベニ「あいつが私達に言った、格が違うという言葉がそっくりそのままあの女にかえってきてる。魂が屈服したがってる証」
ミラ「そ、そんなに凄いんですね……」
ベニ「もしかしたら……カケルが無口なのは、そのせいなのかもしれない」
ミラ「え?」
ベニ「カケルの発する言葉は私達にとって気の本流を感じるのと同じなのかも。ほんの些細な一言でさえ、私達みたいな実力者の魂を掴んで惹きつけてしまう。カケルもそれがわかっていて……」
ミラ「そ、そんな。私、これまで、カケルが無口だとか愛想がないとかひどいことばっかり!」
ベニ「ミラはカケルの幼馴染。ずっと一緒にいた。だから、カケルはミラのことを大切に思って」
ミラ「――……私、なにも知らなかった……」

ミラとベニは、カケルを、己を殺し孤独な人生を自ら選び歩んできた男を想い視線を交わした。

「強い」と一言で終わらせればそれまでだが、一端に強さと言っても様々な形がある。腕っ節の強さ、負けん気の強さ、忍耐力の強さ。人知を超えた神にも等しい力を手に入れたらどうなるか。
――人間は、清廉潔白な生き物ではない。
邪な考えを持つし、気分によって浮き沈みする。誰しもが持つ隙を極力抑え生きてきたのは並大抵のことではないはずだ。カケルのように綺麗なままでいられるだろうか、そう考え、目を伏せた。

ミラ「私達は、勇者のために、カケルのために何ができるのでしょうか」

カケルは、この世に遣わされた希望そのもの。
これまでの勇者が成し遂げられなかった魔王打破ですらも達成してしまうに違いない。
しかし、ここまでの実力差が露見してしまうと、足手まといになるだけだ。それはベニも同じ気持ちだった。

ベニ「五大魔術師なんて言われてる自分が恥ずかしい。世界は広いね」

自嘲的な乾いた笑みが、ミラに向けられる。一筋の涙が、ベニの頬を流れていた。


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