一ノ瀬志希「Evermoreってウソだよね?」
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6: ◆Freege5emM[saga]
2017/03/20(月) 18:01:02.94 ID:3V0ftEOKo
◇◇◇◇◇
プロデューサーはあたしから夜風混じりの破滅願望を嗅ぎ取ったのか、
腕でますます強くあたしの体を締め付けた。あたしの五臓六腑が歪んで苦しさを覚えるくらい。
しかし同時にあたしのフェロモンに中てられたのか、体温の上昇と脈拍数の増加も感じ取れる。
唾液や汗のニオイが濃くなるのも分かる。
いいね、もっと煽っちゃいたい。
――シテほしい。
――シテくれたら、ここにあたしが居られるんだ、って思えるから。
あたしのムチャクチャなお願いにキミのカラダが動揺を露わにする。
――理屈じゃ、ダメだったでしょ?
プロデューサーのつむぐ理屈は、とっても魅力的な夢で、
あたしたちアイドルや、そのファンを、まとめて偶像の渦に巻き込んで陶酔させてきたけど。
でもやっぱりウソなんだと思うよ。だって生易しい。
ココロの隙間に入り込んで、こちらをなびかせようとするだけ。
五感に入り込んで本能に従わせる強引さがないんだ。
あたしが最初にプロデューサーに惹かれた理由だって、
夢のキラキラしさじゃなくて、夢を振りまくプロデューサーのニオイそのものだったし。
ココロの隙間といえばさ。
あたしって、とってもココロが狭いよね。
うーん……『ココロが狭い/広い』の定義をあたしなりに立てるとすれば、
それは『どれだけのヒトの願望を満たしたいと思っているか』じゃないかなーと思ってる。
そう考えると、自分だけじゃなく他の多くのヒトのために積極的に動きたがっている……
例えば響子ちゃんとか夕美ちゃんはココロが広いハズ。それこそ海のように。
美嘉ちゃんみくちゃん蘭子ちゃん飛鳥ちゃんも、きっとあたしよりココロが広い。
ココロが広い分だけ隙間も生じやすいから、ココロの隙間に刺さるキミの夢にどっぷり染まる。
違うとは言わせない。
キミがそこらへんの女の子に魔法をかけてアイドルに変える時、
そのやり口はいつも『〜〜になりたい』という相手のココロの隙間につけこむ物でしょう。
キミのアイドルはみんなイイ子ばかり、って他のヒトはよく言うけど、さもありなん。
キミのプロデュースの魔法は、ココロとその隙間の広いイイ子ちゃんにしかかからないモノなんだから。
対してあたしは、自分さえよければいいかぁ、ってノリだからココロが狭い。それこそ一本の試験管のように。
自分ひとりの願望・興味・感心・衝動etc...すぐ満たされてしまう。
あたしが他のヒトより根気がないってのもそのせいだよ、たぶん。ココロの隙間がすぐ飽和しちゃって。
キミの魔法も、あさーくしかかからないんだ。
どうしたの、早くあたしを黙らせてよ。
いつまであたしに、キミの心血の結晶をウソだとなじらせるつもりなのさ。
不満? 違うよ。
あたし、満たされてないんじゃない。満たされちゃったんだよ。
かつてはともかく、今はもうたくさん。人気も歓声も、今や満腹のときの食べ滓みたいなもの。
だからアイドルとかプロデューサーとかいう立場をぞんざいにくさしてしまえる。
ああ、死がちらつくっての、キミのせいって言ったけど、あたしのせいでもあるかもね。
満たされたら、あとは失うしかないから……。
そこでキミがあたしに掴みかかった理由――なんだったろうね。
キミの描く魔法をあたしがメタメタにくさした憤怒? それとも夢から醒めて喪失に囚われたあたしへの憐憫?
今となっちゃ、どっちだっていいけどね。
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