12: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:12:32.52 ID:upUN87ha0
「これ、低温殺菌牛乳なんです。ミルクティーに良く合うんですよ!それにお茶菓子も少しだけ良い物を用意しちゃいました!」
「わざわざ買ってきたんすか?この牛乳って普通の牛乳より消費期限が早いとかどこにでも売ってるわけじゃないって聞いたことあるけど……」
「私もたまにミルクティー作るんです。だから気にしないでください。お茶菓子は今日のために買いましたけどね」
テーブルにお茶菓子を並べた後、手慣れた動作で紅茶を注ぎ、そこにミルクを混ぜていく。綺麗な模様が出来ていく様を沙紀は興味ありげに見ていた。
「凄いっすね。こういうのアタシはてんで出来そうにないっす」
「そんなことないですよ?慣れてしまえば簡単ですし」
「いやぁ、アタシがお淑やかに紅茶淹れるところ想像できるっすか?」
「う……」
響子は肯定も否定もしなかったがその表情と詰まった言葉から言いたいことは沙紀に存分に伝わった。
「いや、いいんすよ。わかってますから、はい」
「あ、あはは……でも嫌いじゃないんですよね?もしかしてあんまり飲まないですか?」
沙紀は軽く首を振ってにっこり笑う。
「飲むのは、好きっす」
響子もそれを聞いて笑い返すと完成したであろうミルクティーを沙紀の前に差し出す。そして自身も同じようにミルクティーを作ると先程と同じように沙紀の隣に腰を下ろした。
「美味しく出来てるといいんですけど……」
いつもなら対面に座るのが普通だったので、沙紀は今日の彼女との距離感に少し戸惑っていた。しかし、響子はさも当然のように振舞うものだから今はその思考を頭の片隅に追いやり気にしないことにした。
(そういえば理想のデート、っていう形だったっけ。こんな風にされたら響子ちゃんの彼氏は色々保てそうにないっすねぇ)
そこまで考えて、今の自分の位置に名も知らぬ誰かが座っていることを想像した瞬間、何となく胸に靄がかかった。しかしその靄は厚く重い。
(あれ?なんでこんな……?)
その締め付けられるような苦しみがわからず沙紀は困惑した表情をミルクティーに落としていた。
「あ、あの、沙紀さん?」
「え?」
そしてそんな沙紀を怪訝そうな表情で響子は見つめていた。沙紀はそれにハッと気が付く。響子はその表情のまま尋ねる。
「どうしたんですか?ぼーっとして……」
「え?あ、ああっ、その、ちょっと考え事を……」
慌てて取り繕う沙紀を疑念混じりに見ていた響子だったが、結局深く探ろうとはしなかった。
沙紀は話題を変えるように綺麗な色のミルクティーに手を伸ばした。
「そ、それよりも、そろそろ頂いてもいいっすか?」
「あ、はいっ。お口にあえばいいんですけど……」
響子は伏し目がちに沙紀の方を見ていた。どうやら感想が欲しいようである。沙紀は少しだけ熱さを確認するとまずは一口、ゆっくりと味わった。
そしてその目が見開かれた。
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