100:名無しNIPPER[saga]
2017/06/20(火) 13:47:50.58 ID:pBVrEI260
〜【にこが奇異と遭遇した同時日】〜
ぱちり、寝苦しい夜半の夏に絵里は瞬いた
冷房の効き過ぎは夏風邪の一因、寝付くまでの短い間だけ
稼働するようにとリモコンの切タイマーを2度細い指先で押した
そんな文明の利器が快適な空間を提供してくれたのは60分も前の話
絢瀬絵里は微睡みの中へ溶け込めずに居た
身体を寝具の上に預け遠い異国の地に居る祖母に小さく祈り
視界を閉ざしては日の入りが早くなりつつある朝日がカーテンの隙間から
射すのを待つ、たったそれだけであった
が、人というのは時として硝子細工よりも繊細なのだ
比喩を何かしら挙げるとするならば…
そう、例えば"舌"、普段眠りに就く時は何とも思わないだろう生物の器官
「夜眠るときに、舌を必ず動かしてはいけない」と一言、口にしたとする
するとどうだろう、人は"いつもは気にしない事柄"を妙に意識し出す
心という土塊に不安と言う名の小さな球根を埋めておく
それは息を潜めながらもひっそりと芽吹き、漸く認識できる頃には
立派な蕾へと昇華しているのだ
件の"おまじない"の日から、あの入浴中の奇異…
自分のモノでも妹のモノでもない真っ黒な頭髪
絢瀬姉妹以外の誰でもない他人の髪の毛…
まだ、…そう、まだ学院で部活中、もしくは御学友の誰かの抜け毛が
何かの拍子で絵里の身、私物に付着し巡り巡って
彼女の家の彼女の浴室で彼女が入浴中に偶然、偶々ついた
と天文学的な確率でそれが起きたと"言い訳"ができる
そうであってほしいのだ、彼女は祟りや霊というホラ話に滅法弱い
今件は彼女にとっての球根なのだから
暑い夜に冷房が築いた魅惑の理想郷
寝苦しさから解放される世界に居ながらも泥のように眠れない理由だった
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