佐藤心のすったもんだ
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45: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/06/17(土) 22:32:08.65 ID:BGljWOh70

―――
――


はぁとのマンションのインターホンが鳴ったのはその日の夜21時前。お仕事を終えて飲みに行く気にもなれず、一人寂しくお家に帰り付いてすぐのこと。
宅急便だった。


「あのバカ……」


送り主はP。
中身は洋服の生地がどっさり。
見るだけでも、手を触れれば尚のこと高級とわかるそれは、たぶん海外の一流ブランド品にも使われるレベルのもので…単価的にも普段はぁとが使うような生地の何倍もしそう。
はぁとにとっては紙幣で編まれているようにも見えるそんな生地が、それはもう何種類も届いた。


「P! このバカヤロー!! 何してんだ、コラーーーっ!」

『ちょ!? 急にどうしたんですか?』


気まずい気持ちなんて吹っ飛んでしまって、勢いのまま電話をかけて、繋がると同時に怒鳴りつけた。


『あぁ、受け取れましたか。時間指定がうまくいって良かったです』

「はぁーー!? そんなことどうでもいいし! おまっ、これっ…どういう…なんでこんなの送ってくるんだよ…っ!?」

『心さんには新しい服を買うよりかは洋服の生地の方がいいかなぁって。今朝も言おうとしたんですけど、急に帰っちゃうから』

「はぁっ!? いや…まぁ、生地の方が良いのは、確かだけどさ…じゃなくて! 高い生地をこんなにたくさん買いやがって!」

『えっ? 値札入ってましたか…? 値段が分かるものは取っておいて下さいってお願いしたのになぁ…』

「んなもんなくても、見りゃわかるってーの! はぁとナメんじゃねぇぞ☆」

『ははははは』


何が面白いのか全然わからないんだけど、ケラケラ笑うPに呆れてしまい、こっちまで乾いた笑いが出てくる。
何度触れてみても生地の手触りは素晴らしくて、もちろんそれだけじゃなく…。


『それよりも。色とか柄ってどうでしたか? なるべく心さんの好きそうなの選んだつもりなんですけど…』

「ぁ…そ、それは……」

『…………あちゃー、やっちゃいました俺…?』

「いや…だ…だいじょうぶ…」

『あぁ、気にしなくてもいいですよ。また後日、今度はちゃんと一緒に買いに行きましょう?』

「だから大丈夫だってっ! だって……っ」

『……ん?』


だって、どの生地も胸キュンするぐらい好みの色と柄だったから…。
そう言おうとして、でもそれは負けたみたいに思えてしまって、結局言えなかった。


「な、なんでもない! 生地はもう当分はいらないからっ」

『そうですか…? ならいいんですけど』


気恥ずかしさが蘇ってきたせいか急激に顔が熱くなっていく。


「あーーもう! とにかくっ、今度からは勝手にこんなことするんじゃないぞっ☆ あと……………………………ありがと」

『いやいやそんな、悪いのは俺ですから』


電話を切った後、たしかにPの言う通り、はぁとがお礼を言うのはおかしい気もしてきてちょっと複雑な気分だった。


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