シンジ「その日、セカイが変わった」
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32: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/06/24(土) 20:35:53.66 ID:zV+SN6BF0
シンジ「母さんは……ほとんど記憶にないんです。思い出といえることはなにも。ただ、父さんは母さんを今でも忘れてないんだと思います」

ユイ「なぜ?」

シンジ「毎年、墓参りに行ってるから」

ユイ「あなたは、お母さんを恨んでる?」

シンジ「いえ、不慮の事故で亡くなったらしいんです。ただ、かわいそうだな、としか」

ユイ「他人事でしかないのね」

シンジ「実感がわかないんです。母さんがいたというだけで」

ユイ「興味深いわ」

シンジ「え?」

ユイ「あぁ、ごめんなさい。癖みたいなものだから」

シンジ「……」

ユイ「人は、誰しもが個を確立して生きているの。自分が自分であるという証明ね。何事にも二面性があるように、良いところと、悪いところがある。なにかわかる?」

シンジ「自由と、孤独、かな」

ユイ「正解。あなたの母親は、人の孤独に寄り添う永遠の存在になりたかったのよ」

シンジ「母さんが?」

ユイ「えぇ。裏死海文書に記載されている意味を、真に理解しているのは、彼女だけだったんじゃないかしら」

シンジ「う、うら……」

ユイ「昨日の神話の話の続き」

シンジ「また、その話ですか」

ユイ「母親があなたを、そして夫を捨てたことに後悔をしていないとしたらどう思う?」

シンジ「え? だって、事故で亡くなったのに」

ユイ「聞いた話だけが全てではない。あなたを、夫を、愛していた。だけど、罪悪感なく捨てていたとしたら?」

シンジ「まただ。言ってる意味がわかりません」

ユイ「あなたはまだ何も知らない。教えたとしても、理解できる受け皿がないのね。でも、仕方ないのかもしれない。そうやって生きてきたんだから」

シンジ「……」

ユイ「時は残酷ね。個人の都合とはかけ離れた概念で動いている」

シンジ「はぁ」

ユイ「あなたの話に戻しましょう。エヴァパイロットになってよかったことは?」

シンジ「僕は、迷惑をかけてばっかりです」

ユイ「それでも人類を守っているのでしょう?」

シンジ「そう言ってくれます。ミサトさん、職員の人たち。だけど、僕はみんながそう言ってくれてるのに、エヴァパイロットの価値しかないって」

ユイ「自分自身の価値を見つけられないのね」

シンジ「わがままですよね」

ユイ「自分を責めないで、当たり前よ。だけど、エヴァパイロットも含めて、あなたの価値だと思わない?」

シンジ「……」

ユイ「なぜ選ばれたのか、なぜ乗れるのか。それは理由のひとつずつにしか過ぎない。あなたが乗れる、そして、あなたが守っている。その事実を、周囲の人は認めてくれているのよ」

シンジ「やっぱり、僕には関係ない」

ユイ「ジレンマを抱えるのはわかるわ。でも、あなたがあなたを認めてあげなくちゃ。そんな自分でもいいって」

シンジ「そんな、自分でも、いい」

ユイ「ひとつじゃないのよ。あなたが選んだものが正解になる、正解にしてしまうの。誰だって突き詰めれば自分の為に生きているんだもの」

シンジ「そうでしょうか?」

ユイ「自己犠牲で愛する人の為に、なんて建て前を言っても、愛する人の喜ぶ姿が見たい自分の為でもあるでしょう?」


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