69: ◆JdP.BncS3o[saga]
2017/11/10(金) 00:03:55.56 ID:hkmdkaN70
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6合目 目撃!かえでさん
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「う、動けない……」
「大丈夫大丈夫、だれにも出会わなきゃ大丈夫だって」
「絶対見つかるわよ……」
夏の日の入りは遅い。
まだ夜というには早い時間帯で、家まで2キロ以上の距離を誰にも見つからず帰れる確率なんてゼロに等しい。
「それじゃ私が先に行って人通りを確認するからあとからついてきて」
小春は私が立ち上がれないのも構わずに歩き出した。
こうなると不思議とどうにかなるもので、ゆうかに肩を借りてゆっくりと小春の後をついていく。
次の角で小春が手をこちらに突き出した。
曲がり角から誰か来る。
私は電柱の裏の狭い隙間に入り込んで通行人をやりすごす。
一瞬安心したところで今度は車が来て、とっさにゆうかの後ろに隠れた。
あー、これはばれたかなー。
そのあともゆうかにピッタリとくっついて人目を避け続けた。
「かえって目立つわよ」
「でも……」
「しょうがないか。できるだけ私がなんとかする」
ゆうか、本当にありがとう。
そうこうしているうちに見慣れた景色が眼前に広がってきた。
「ね、なんとかなった」
小春は軽く言うけど私は心が千切れそうになっている。
自分の家の前までくると高まるばかりの緊張を解いてその場に座り込んだ。
ところが、である。
「あ、かえでさーん」
玄関先に並んで立っていたのはひなたちゃんとあおいちゃん。
まずい。完全に油断していた。
今は手で隠してすらいなくて見事に丸見え状態。
「相談したいこととかいろいろあって来たんですけど、留守だったから待ってたんです」
「暗くなってきたからそろそろ帰ろうと思ってたからよかったです」
あれ、二人とも何も言ってこない。もしややっぱりそう簡単には気づかないものなの?
「あ、ありがとう。よかったらあがっていって」
「それじゃお言葉に甘えまして」
「ところでかえでさん、今日はまた大胆な格好ですね」
「気づいてたの!?」
「そりゃ気づきますって……」
「なんでみんな平然とスルーしてるのよー!」
私はわき目を振らず浴室に駆け込んだのであった。
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