【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:29:20.20 ID:u1xI7N2CO
 それから大分時間が経った。空はもう赤く染まっている。

 何気無しに外を見ていた兎角であったがふと廊下に気配を感じて意識を高めた。
 扉の前に誰かがいる。しかし兎角は振り返らず窓の外を眺め続け、時が来るのを待った。
 二分ほど経って控えめに二度ノックがされ、そしてドアノブの回る音が聞こえた。兎角はまだ振り返らない。
 やがて一人が部屋に入り一歩二歩と近づいてくる。
 その足音が兎角の背後およそ6メートルほどで止まったとき、兎角は初めて振り返った。

「お帰り、晴」

 兎角はそう言ってから深々と頭を下げた。

「兎角、さん……」

 半月ほどぶりに聞いた晴の声は緊張と困惑が混じっていた。当然と言えば当然だと兎角は思ったが同時にこのタイミングを逃すつもりもなかった。

「私の軽率な判断のせいでお前を傷つけた。謝罪で許してもらえるとは思っていない。それでも謝らせてくれ。晴、本当にすまなかった」

 何よりも先んじて謝罪の言葉を並べる兎角。
 晴は何も返さない。
 不意打ち気味の謝罪に戸惑っているのだろうか。しかし兎角としてもこれしか方法がなかったのだ。
 十秒ほどそうして固まっていたところに晴がおずおずと声をかける。

「えっと、兎角さん……とりあえず頭上げて、ね?」

「晴……」

 素直に顔をあげる兎角。晴の声と表情を見るに少なくとも怒りが前に出ているようではなかった。それだけでも大分兎角の心は軽くなった。

「とりあえず座ろっか……」

 晴はそう言ってソファーに腰かけ兎角も勧められるまま腰を下ろした。


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