【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:31:41.25 ID:u1xI7N2CO
 二人が腰かけてから少しばかりは沈黙が続いた。
 きっかけが掴めないのか踏ん切りがつかないのか、あるいはその両方か。
 しかしこのままではらちがあかない。だからこそ兎角の方が先に口を開いた。

「晴……」

「はいっ……!」

 晴はびくんと肩を震わす。
 晴の様子に申し訳なさを覚えつつも兎角は言葉を続けた。

「訊きたいことや、言いたいことがあるなら何でも言ってくれ……何でも答えるし、何でも聞く……全部言ってくれ。全部聞きたいんだ」

 兎角は静かに唾を飲んだ。変な言い回しじゃなかっただろうか。傲慢な言い方だったろうか。
 緊張が高まる中、晴も決心をしたように口を開いた。

「兎角さんは……」

「ああ」

「生田目さんの方が、好きなの……?」

「それは違う!」

 兎角はすぐに否定した。それは違うと。それはしてほしくない勘違いだと。そのせいか思わず大きな声が出てしまい晴も兎角自身も少しばかり驚いた。
 兎角は座り直して改めて否定する。

「それは違うんだ、晴。私が一番大切なのはお前だ。そこは一度たりとも変わったことはない」

 力強く思いを伝える兎角であったが晴の顔にはさらに困惑が広がった。

「……じゃあ、どうして……」

 晴が息を飲む。

「どうして生田目さんとあんなことしてたの……?」

「っつ……!」

 兎角が言葉に詰まる。
 そう、普通ただの友人同士は『あんなこと』はしない。それは恋人同士がするものだ。そしてさらに言えば兎角と千足のそれは、本来の恋人である晴とするそれよりも遥かに激しいものだった。
 兎角は頭を抱えた。

「……違う。違うんだ……ちゃんと話す。ちゃんと話すから……聞いてほしい……」

 そこに至るまでの兎角と千足の心理状態は複雑で他人に理解できるように説明するのはとても難しそうに思えた。
 しかし説明しないわけにはいかない。兎角は自分を落ち着かせようと深呼吸した。喉もひどく渇いていたが飲み物を要求する余裕はなかった。


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