【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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27:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:36:06.54 ID:u1xI7N2CO
 沈黙はどれほど続いただろうか。
 十分か二十分か。しかしもしかしたらまだ一、二分かもしれない。兎角にとってはそれほどまでに長く感じる時間だった。

 やがて晴がぽつりとつぶやいた。

「どうして……」

 その声はとてもか細く弱々しかった。

「どうして言ってくれなかったの……?」

 兎角は後悔するようにきつく目をつぶった。要は始まりはそこだった。

「ごめん……言い出せなかったんだ……その、恥ずかしくて……」

 言い出せていれば今こんなことにはなっていなかったはずだ。

「それに、怖かったんだ。情けない姿を見せたら、嫌われるんじゃないかって思って……」

「兎角さん……」

 さらに少しずつ語っていく兎角。
 晴の前ではかっこいいままでいたかったこと。
 一方で時に強く乱暴にされたいと思ってもいたこと。
 なんでもない時に急にむらむらときて、自分が性欲が強すぎるのではないかと悩んだこと。
 その性欲に任せて晴に迫ったら嫌われるのではないかと恐れたこと。
 改めて口に出すと逆に何でこんなことを相談できなかったのかと思うようなことも多々あった。

 やがて兎角が語り終える。
 晴はやはりこの間兎角の話を黙って聞いていて、兎角がしゃべり終わった後もしばらく黙ったままだった。
 しばらくしてから晴はおもむろに立ち上がり兎角の方を向いた。その表情は、悲しみは大分薄れているようであったが、代わりに困惑が広がっていた。

「兎角さん……話はわかりました。でも、その、少しだけ時間をください。ゆっくり、色々、考えたいんで……」

 言葉を選びながら話す晴に兎角は静かにうなずいた。

「ああ、わかった……」

 こうしてこの日の会合は終わった。


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