【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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53:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/22(火) 00:13:00.32 ID:xiHy4lmiO
金星寮C棟10号室。
この部屋は本来空き部屋であるのだが、今日はひどく人の気配がした。
部屋の空気はほのかに火照り、汗と愛液とわずかなアンモニアの臭いがした。ベッドのシーツは乱れ、その脇には衣服が投げ出されている。
ベッドは二台ありそれぞれ二人ずつが使っている。一方では幸せそうに添い寝をしており、もう一方では片方が相手を膝枕をしている。
その膝枕をしている方が幸せそうに相手の髪を撫でながら声をかけた。
「兎角さん、眠いんじゃないの?」
膝枕をされている方、兎角ははっと目を覚ます。
反射的に「違う」と言おうとしたが、うとうとしていたのは事実なので言葉に詰まって視線を横に反らす。
そんな兎角の子供っぽい反応に晴は微笑む。
「ちゃんとした枕で寝た方がいいよ」
そう言った晴であったが兎角が膝枕から離れてしまうのは惜しくもあった。
晴がそう考えていると、兎角が一瞬晴に視線を戻し、そしてまた恥ずかしそうに反らした。
「もう少し……」
「ん?」
「もう少し、このままでいたい……」
「……そっか」
「ああ……」
そう言って兎角は目をつぶり、晴はまた幸せそうに兎角の髪を撫で始めた。
兎角は自分の呼吸が穏やかになっていくのを感じた。このままだともうすぐ本当に寝てしまうだろう。寝るなら晴の言う通りちゃんとした枕で寝た方がいい。
しかし兎角は、今日はこのまま晴の膝枕で寝たいと思った。
たぶんそれが一番気持ちよくて、一番よく眠れるはずだ。起きたときに晴になにか小言を言われるかもしれないが、それですら密かに楽しみであった。
兎角の呼吸がさらにゆっくりになる。もはやまぶたを開けることすら億劫になっている。
兎角は最後に口を開いた。
「晴……」
「はい?」
「寝る……」
「ふふっ……はい。お休みなさい、兎角さん」
晴はもう一度兎角の髪を撫でた。
兎角は幸福感に包まれたまま、ゆっくりと意識を手放した。
了
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