鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」
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2: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/10/07(土) 23:48:28.38 ID:mxDxIcFa0
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20〇×年11月25日
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悪くない目覚めでした。
空腹で目を覚ますというのがなかなか人間的で、笑ってしまいました。
近場のスーパーまで赴いて食料を調達してきたので、今日は休憩しながら書くことにしましょう。


なんともまぁ…我ながら見事に失恋したものです。

それに、こう文字にしてみると、美波さんの大胆過ぎる行動には今でも畏怖の念を禁じ得ませんし…。
おそらく彼女はあの日始めから、自分の目的を達するためにPさんのお宅に来ていたのでしょうね。
(少しでも私を祝う気持ちを持ってくれていたなら嬉しいのですが…)

ですが。あの夜から数日の間、お仕事そっちのけで考えていたのはそういったことについてではありません。

そもそも、美波さんのあの夜の振る舞いを線と点で結ぶことが出来たのも、つい一昨日のことです。
(もし仮に10月28日に日記を書いていたとしたら、全く別の記述になった筈)
それまであの二人が結ばれたのは、私のような黴臭い人間には一生理解できない『男女の妙』や『青春の雰囲気』に依ってなのだろうと、全く理解できていないくせに不思議と納得していたぐらいです。
(なんという莫迦さ加減)

あの夜の後、私の頭の中を埋めていたのは別のこと。

『何故私は動くことが出来なかったのか?』

ということについてでした。
失恋したことや彼女に出し抜かれたということよりも、その疑問の方が私にとっては問題だったのです。
(もちろん両方とも相当に大きなショックではありましたが…)
なにせ自分のことなのに理解できなかったのですから。
二人が交わる直前に言っていたように、私が起きる素振りを少しでも見せれば展開は全く違っていただろうに…何故?

Pさんが私に操を立ててくれると信じていたから?
中断させると美波さんが可哀想だったから?
夢かドッキリであると決めつけていたから?
実は動こうとしていたのに酔いの所為で動けなかっただけ?

数日はそんな風な見当違いの理由をごちゃごちゃと捏ね繰り回していました。


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