イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」
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944: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2024/09/12(木) 01:07:34.43 ID:K/wwgU6M0
…年の瀬…

父「それじゃあそろそろお蕎麦を茹でようか。お祖父ちゃんたちは座椅子でウトウトしていたけれど、しきたりだから起こしてきたよ……葱でも刻もうか?」

母「私がやるから大丈夫よ。お義父さんたちもお腹いっぱいでしょうけれど、形だけでも食べてもらうとしましょう」

父「そうだね、僕もそんなにはいらないから」

母「そう。深雪、あなたは?」

百合姫提督「私もお腹いっぱいだから少しでいいわ。それとお箸と出汁の徳利は出しておいたから」

母「ええ、ありがとう」

…年末特番もそろそろ大詰めといった頃合いになってきたところで、年越し蕎麦の準備に取りかかる百合姫提督たち……天つゆこそ市販の濃縮つゆで済ませているが、出汁はふわりと香る鰹節と日高昆布で取ってあり、薬味の小皿には刻んだ葱と細切りにした海苔を添え、台所には井筒の型をした蕎麦用のざるも用意してある…

祖父「そろそろ年越し蕎麦の時間だそうだな、いつの間にかうつらうつらしていて気付かなかったぞ!」

祖母「私はそんなに要りませんから、ほんのおしるしだけね」

母「はい……それから熱いのと冷たいの、どちらにします?」

祖父「それならざるで頼むぞ!」

父「父さん、冷たい蕎麦をたぐってお腹が冷えないかい?」

祖父「少しだけにしておくから平気だ!それより深雪の分を先に茹でてやりなさい、こんな遅くまで起きていて小腹が空いたろう!」

百合姫提督「うん、ありがとう」

祖父「お腹が空くのはいいことだぞ!それに育ち盛りが蕎麦だけじゃ足りないだろうから、かき揚げかなにか付けてやりなさい」

百合姫提督「それならさっき色々つまんだりしたから大丈夫」

祖父「そうか?蕎麦だけでいいのか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……お祖母ちゃんは熱いお蕎麦、それとも冷たいお蕎麦?」

祖母「私は温かいのにしますよ」

百合姫提督「はい」

…母が蕎麦を茹でるかたわらで、天つゆを温める百合姫提督……祖父が音量を上げたテレビからは、年末番組のフィナーレを飾る司会のあいさつや華やかな歌手たちのにこやかな表情が映っている…

母「さあ、茹だったわ」もうもうと湯気を立てる蕎麦をざるでしゃくいあげると、さっと冷水で締める……

百合姫提督「それじゃあ私が……お父さんはどうする?」

父「かけ蕎麦にすると手間がかかるだろうから、冷たいのでいいよ。この部屋は暖房も効いているし」

百合姫提督「分かった。お母さんは?」

母「それじゃあ私もざる蕎麦にしようかしら。冷たいのは私が準備するから、お祖母ちゃんの分だけお願いね」

百合姫提督「はい」

…手がかじかむような冷水で締めた蕎麦のうちから祖母の分をつかみ取り、温めたつゆの中でさっと泳がせる……お湯に通して軽く温めておいた丼に蕎麦を盛ると、軽く沸かした熱いつゆをかけてさっと出す…

百合姫提督「お待ちどおさま」

祖母「はい、どうもありがとうね」

父「それじゃあ改めて……良いお年を」

百合姫提督「良いお年を」手を合わせると箸を取り上げ、ざるに形良く盛った蕎麦をすくうと「つつぅ…っ」とたぐる……出汁の利いたつゆの絡んだ冷たい蕎麦が心地よく喉を流れ、ふっと鼻腔に蕎麦の風味と鰹出汁の香ばしい香りが抜ける……

祖父「うむ、美味い!」ざるの蕎麦に軽く七味唐辛子を振って、そば猪口のつゆに半分も浸けず、小気味よくすする……

父「ああ、美味しいね」

…百合姫提督たちがそばをたぐり終えたころ、ちょうど年越しの様子を伝える番組が始まった……アナウンサーは生真面目な声で、悲喜こもごもの一年を振り返りつつ、にぎやかに……あるいはしめやかに年越しを迎えた各地の様子を除夜の鐘とともに伝えていき、時計の針が零時を回った…

アナウンサー「皆さま、明けましておめでとうございます!」

父「はい、明けましておめでとうございます」改まって一礼した……

母「明けましておめでとうございます」

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

祖父「うむ、明けましておめでとう!」

祖母「明けましておめでとう……本年も良い年になりますように」

………


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