917:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/02/10(日) 00:06:36.12 ID:ieIUJkHq0
ちょっとだけ投下します
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「えーっと…?」
気が付くとミルキィは見知らぬ場所に立っていた。
影のツバキにこっぴどくやられた…ということはなんとなく覚えている。
だからといってその後、意識が無くなっている間に何がどうなればこんな状況になってしまうのか…ミルキィにはさっぱりわからなかった。
ミルキィの目の前に広がる光景は…
「よってらしゃいみてらっしゃい!人参大根白菜レンコン!どれもこれもお安くしとくよ〜!おっとそこいくおばあちゃん、もといお嬢さん、今夜は山芋なんてどうだい!」
「はぁいお兄さん一名ご案内!ムチムチからロリロリまで!可愛い子がそろってますよ〜!」」
「わーんママ〜どこ〜」
「おっそこのお姉さん!うちの店よってかない?よりどりみどりのイケメンたちがキミを待ってるぜ!」
「ラララ〜♬ 恋する貴方の瞳に〜♬ 僕たちはいつだって夢中なのさ〜♬(ジャカジャカ♪)」
たくさんの、人、人、人。
威勢のいい八百屋のおじさんに、ちょっといかがわしい雰囲気の店の客引き。
お母さんとはぐれたのか泣きながらさまよう少女。
自慢の喉を披露しておひねりをいただく吟遊詩人…
わいわいがやがやと賑やかな喧騒とどろくその場所は。
「どう見ても…街だよね?」
ミルキィはただ茫然と呟くことしかできない。
ダンジョンタワーの1Fにいたはずの彼女は何故か、見たことのないどこかの『街』へと飛ばされてしまったようだ。
「…いやいやいや!おかしいでしょ!こんなの!なんだっていきなりこんな街中へ飛ばされなきゃなんないのよ!」
多くの人が行き交う雑踏の中、ミルキィが一人わめきたてる。
「うるせいなぁ。あんたこんな往来の真ん中に突っ立って何を叫んでんだ」
「えっ、あ、ごめんなさ…」
後ろから文句を言われ、振り返ったミルキィはギョッとして硬直する。
ミルキィに文句を言った男は人間ではなかったからだ。
とんがった耳に突き出した鼻。
顔はふさふさの茶色い毛で覆われており、裂けた口からは鋭い犬歯がきらめいているのが見える。
人間の体に、犬の頭をもつ亜人…『コボルト』だ。
「わわぁっ!?犬ぅ!?」
「なんだなんだ、失礼な嬢ちゃんだな。そんなにコボルトが珍しいか…って、ああそうか。あんたも余所から来たのかい?」
犬頭の亜人は流暢に人の言語で話しかけてきた。
「そりゃめずらし…って『あんたも』?」
「最近妙な余所者が増えているんだよ。そいつらは口を揃えて『下の階層から来た』だの『港町から来た』だのわけのわからんこと口走りやがる。あんたもそのクチじゃねぇのか」
「下の階層…港町…あぁっ!」
何かに気づいたかのように、ミルキィは頭上を仰ぎ見た。
目をこらして、はるか頭上高くに見えたもの。
そこにあるのは青空などではなかった。
「やっぱり『天井』だ! 天井がある!」
(そうか! ここは…
『ダンジョンタワーの中にある街』なんだ!)
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