918:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/02/10(日) 00:10:11.61 ID:ieIUJkHq0
状況が見えてきた。
自分はどうやらタワー内の1Fとは違う別の階層へと飛ばされてしまったようだ。
頭上高くに見える『天井』が何よりの証拠。
コボルトたちの言う『余所者』とは自分たちよりも先んじてこの階層に到達した他の冒険者たちのことに違いない。
「え? ああ、そうだ、『天井』だよ。頭の上には天井がある。当たり前だろそんなこと」
キョトンとした顔でコボルトが言う。
「もしかして…『空』ってわからない?」
「 そら ? なんだそりゃあ。見たことも聞いたこともねぇな」
どうやらミルキィとここで暮らす人々とは決定的に常識というものが異なっているようだ。
ミルキィの世界では『頭の上に空がある』ように、彼らの世界では『頭の上に天井がある』。
そもそも『下の階層』というものがよくわかっていないようで、彼らはこの街が『塔の中に存在している』ということすらわからずに暮らしているのではないだろうか?
「もうちょっと聞いていい? この街ってどれくらい広いの?」
「え? さぁ…確かめたことないからわかんねぇな」
「そ、そう…」
なんだか途方もないことを聞いているような気がしてきたのでミルキィは質問するのをやめた。
やはりこのダンジョンタワーは色々な意味でおかしいのだ。
「あ、そうだ」
この街がダンジョンタワーの中にあるというのなら、『携帯脱出ポータル』を使って塔の外へ出られるかもしれない。
(他の冒険者たちをあたってみよう。もしかしたら譲ってくれるかも…!)
ミルキィはコボルトから『余所者』たちのたまり場らしき酒場の場所を聞き出し、そちらへ向かうことにした。
それにしても、ほんとうににぎやかな場所だ。
雑踏の中を見渡せば、さっき出会ったコボルトのような亜人の他にもエルフやノームらしき種族の姿が少なからず見つかる。
甘味屋のベンチでは小さなホビット族のカップルが仲睦まじくおしゃべりをしているし、
よくよく見れば古書店で本棚の埃掃除をしている大きな体の亜人はなんとオークだ。
これほど雑多な種族が集まる街なんて世界中どこを探しても存在しないのではないだろうか。
(不思議な街だなぁ…もうちょっとあちこち見物したくなってきちゃった)
ミルキィは街の雰囲気を楽しみながら酒場へ続く道を歩んでいく。
そんな時。
「ぐすっ…ぐすんっ…」
ふと、狭い路地の向こうからすすり泣きのような声が聞こえて思わず足を止めた。
「おねえちゃん…おねえちゃん…どこぉ…ぐすっ、ひっく…」
(んん…?)
気になって覗き込んで見れば、薄暗い路地裏で小さな女の子が身体を丸めて座り込んでいるではないか。
「うぇぇぇ…うぇぇぇん。おねえぢゃん…おねえぢゃんん…」
見つけてしまったからには仕方がない。
何が理由で泣いているのかはわからないが、放っておくわけにはいかないだろう。
「ね、ねぇ、お嬢ちゃん…大丈夫?」
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