954:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/03/18(月) 11:31:33.78 ID:6nGy8dvY0
奇妙なことだが、『塔の中の街』にも夜が来る。
地上と同様、決まった周期で昼と夜が入れ替わるのだと、あのコボルトは(当たり前だろう、と言いたげな顔をして)説明してくれた。
とにかく街が明るく照らされている時間は昼で、街が闇に包まれている今は夜である…らしい。
そんな不思議な夜の時間を、プリティーうさちゃんズはその街の宿で過ごしたのだった。
そしてその翌朝。
ミルキィを除くメンバーは作戦会議のために宿の食堂に集合していた。
「ギンガ、さっきからなにをいじってるの」
アリスの隣りの席で、ギンガは小さな箱のようなものを開いて何らかの操作を行なっていた。
「これは『携帯脱出ポータル』の再設定を行なっているところです」
ギンガは箱の中を覗き込みながら、針金のような器具で箱の中をカチャカチャと弄り回している。
『携帯脱出ポータル』。
普段は手のひらサイズの立方体だが、展開することでダンジョン外部へのゲートを開くことができる冒険者御用達のアイテムである。
「うん、これでよし…と。ツバキ様、再設定が完了いたしました」
「おお、やってくれたか。これでこのポータルを使えばいつでもこの宿屋に帰還できるというわけだな」
立方体を受け取ったツバキが満足げに頷いた。
「本来はそのポータル、ダンジョンの中から外へ出るだけの機能しかないんですよね。
設定を切り替えて転送先を変えることができるなんて、初めて知りました」
クチナが興味深そうに言う。
「アイテムの改造は動作の保証ができなくなるということで推奨されてはおりませんが…この程度の設定変更なら問題は無いはずです」
「よし…これで準備は整ったな」
ツバキは立方体をグッと握りしめると立ち上がり、力強く言い放つ。
「さて本日の作戦会議だが…まず最初に宣言しておく!
我々『プリティーうさちゃんズ』は本日より、
この『 ファンタズマ 』の街を拠点に活動を開始する!」
『ファンタズマ』。
昨日の聞き込みで集めた情報によれば、どうやらそれが街の呼び名であるらしい。
名前の由来や、いつからそう呼ばれているのかは誰も知らない。
そしてそれを気にしている者は一人もいないようだった。
ツバキたちより先行していた他の冒険者ギルドは既にこの街を拠点として塔の攻略に励んでおり、さらにはあのライバルギルドの構成員たちもこの街で活動を開始しているのだという。
「無念です。彼奴らに先を越されるとは…」
何かと因縁の深い相手だけにギンガは表情を曇らせる。
「正直口惜しい気持ちはある。だがあくまで我らの活動は港町の人々の平穏を取り戻すことだ」
対するツバキはあくまでも前向きだ。
と思いきや。
「だがあの男は…再び私の前に現れたなら、その時は容赦せんがな…」
ゴゴゴゴ…
「リーダーツバキ こわい」
「そりゃまあ許さないですよね、普通」
憤怒の炎を滾らせるツバキの姿におののくプリうさ一同であった。
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