ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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567: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2021/08/30(月) 00:59:09.12 ID:3qHUnNkw0
アンジェ「それじゃあこれは?」

老人「ああ…これはですな、当時のパリで作られた……」

ドロシー「…」コートの下からナイフを抜くと、いきなりクッションの部分に突き立てて表地を切り裂いた…

老人「何ということを…この椅子は十六世紀のアンティークだというのに!」

ドロシー「…アンティークが聞いてあきれるぜ、どれもこれも贋作のくせしやがって」

老人「何を言うか、このルイ王朝時代の家具を贋作じゃと!?」お客相手のへりくだった言い回しを使うことも忘れ、真っ赤になっている…

ドロシー「下らない芝居はやめな…骨董品もお前さんの素性も真っ赤な偽物だって事くらい分かって来てるんだよ、こっちは」

アンジェ「…それに本物のルイ王朝時代の家具だったらここの曲線はもっと柔らかく、色はもっとくすんでいる」

老人「……ほう、二人とも若い娘のくせになかなかの鑑定眼じゃな」すっかり調べ上げられている事を理解して、急に大人しくなった…

ドロシー「商売柄そういう機会が多いものでね。それじゃあトーシロ相手の商売はお休みにして、一緒にドライブとしゃれ込もうじゃないか…」

老人「その上でわしの頭に鉛玉を撃ち込んでテムズ川へ放り込むのか…?」

ドロシー「ああ、本来ならな……だが、まだお前には重さ200グレインの鉛玉一発よりは価値がある、逃げようとしなければ脳天をぶち抜く真似はしない」

老人「…信用できるのか?」

ドロシー「少なくともここのアンティークよりゃな」

老人「……分かった」

ドロシー「よし…」軽く指を動かして合図すると、アンジェが後ろに回って老人の腰に銃を押しつけた…押しつけた銃そのものはまとっている長いケープに隠れて外からは見えない…

ドロシー「それと今さら言うことでもないだろうが、おかしな真似はするなよ?」

老人「分かっておる。こんな年寄りじゃが、それでもまだ長生きはしたい」

ドロシー「いい心がけだ……どうもこの世界では命を無駄にする人間が多いもんでね」

老人「…それで、どこに連れて行くつもりなのかね?」

ドロシー「おいおい、言ったそばから寿命を縮めるような真似はするなよ…余計なせんさくは怪我の元だぜ?」

老人「沈黙は金(きん)…か」

ドロシー「その通りさ……それと目隠しもさせてもらう。ロンドンの眺めを見られなくて残念に思うが、これもお互いの健康のためだからな」

老人「ああ、それもやむを得まい…」

…車内…

老人「ところで、どうしてお前さんたちのような若い娘がスパイ稼業なんぞをしとるんじゃ…?」

ドロシー「さぁ、どうしてだろうな♪」

アンジェ「…あなたこそ、一体どうして贋作作りなんてしていたの?」

老人「わしか……実はな、わしには昔エマという女房がいてな…もうあれが先立ってしまってから二十年にもなるが……」

アンジェ「それで?」

老人「そのころまだわしは「まっとうな」古美術商だったんじゃが、ろくろく稼ぐこともできんでな…貧しい生活をしている中でエマは病気になってしまって……」

ドロシー「なるほど…」

老人「うむ…で、あるとき古い無名の絵を買ってきて元の絵をすっかり削り落とし、そこに有名画家の画風を真似た絵を描いたところ、それがいい値段で売れての……エマに栄養のあるものを食わせてやったり、薬を買ってやるためにも金が入り用だったものじゃから、そのまま続けておったのじゃ…」

ドロシー「…ところがある日、なんの特徴もない男が二人ばかりやって来た」

老人「いかにも……連中は殴ったりこそしなかったが、女房の事を持ち出してきての」

アンジェ「あなたが刑務所に入ったら、病気の奥さんは面倒を見る人間もなしに亡くなってしまうだろう…と」

老人「その通りじゃ…それ以来、わしは連中の言うがままに贋作を作ってきた……」

ドロシー「もうその必要も無くなったな……よし、着いたぞ。 転ばないよう足元に気をつけな」

老人「うむ…」慎重に足元を確かめ、そろそろと車から降りた…

ドロシー「それじゃあな、爺さん…」

アンジェ「……奥さんの事は気の毒に思うわ」

老人「おかしなもんじゃな…わしをさらったお前さんたちの方が、女房の事を気にかけてくれるなんてな……」そのまま共和国側のエージェントに支えられて、奥へと連れて行かれた…


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