ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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566: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2021/08/29(日) 02:02:01.29 ID:J1ecVcy00
…数時間後・部室…

ドロシー「どうだった?」

アンジェ「…さっき暗号を解読したけれど、明日のうちには対象人物を届けるよう指示されていた。普段は綿密な工作を要求するコントロールだけに、これだけせわしないのは珍しいわね」

ドロシー「それだけ尻に火が付いている事態だってことだろうよ…で、その「対象人物」とやらはどんな奴だ?」

アンジェ「ええ……情報によると対象はアンティークの美術品を扱っている老人で「トーマス・フロビッシャー」を名乗り、髪は白髪で目は淡いブルー、身長は5フィートそこそこ」

ドロシー「小柄な爺さんだな…他に特徴は?」

アンジェ「ないわ」

ドロシー「ずいぶんあいまいだ…」

アンジェ「そういう意見もあるわね。それと、店の場所はここ」指示書と一緒に入っていた薄紙を法則に従って地図に重ねると、一点を指し示した…

ドロシー「分かった、それじゃあ急いで支度をしよう……もし爺さんをさらうとしたら、誰かに見られても人相や風体が捉えにくい黄昏時にしたいし、現地の様子を確かめる時間も二時間はいるからな」

アンジェ「ええ」

ドロシー「よし、そうと決まれば車を用意してこないとな…その間にそっちも準備を整えておいてくれ」

アンジェ「そうするわ」

…黄昏時…

ドロシー「ここか…」

アンジェ「ええ」

…しばらく車を流して公安や防諜部の見張りがないことを確かめると、小さな間口の店の前にロールス・ロイスを乗り付けた…ドロシーは黒のシルクハットに燕尾服、長髪を結い上げて帽子の中に隠して男装をし、アンジェはペールグレイのドレスに長いケープをまとい、顔はボンネットの陰に隠れている…店の入口の脇には小さく古びてはいるが良く磨かれたマホガニーのプレートがあり、かすれかけた金文字で「古美術商、トーマス・フロビッシャー」とある…

ドロシー「…ごめんください」

老人「いらっしゃいまし……」

…入口を開けるとカランコロンと鈴の音が鳴り、カウンターの奥にいた老人がゆっくりと出てきた…老人は白髪で小さいレンズの丸眼鏡をかけ、地味な格好をしている…店内は古びた布が発しているかすかなカビの臭いや絵画のテレピン油、ニスや木材の匂いが合わさって、いかにも年季の入った骨董品屋の雰囲気をかもし出している…床にはロココ調やバロック調の家具が所狭しと置いてあり、壁にはくすんだ額縁に入った絵画やリトグラフが飾ってある…

老人「…いかがです、何かご興味がございますか?」

アンジェ「ええ…これは素敵な絵ですね」

老人「おや、こちらがお気に召しましたか……お若いレディはお目が高くていらっしゃる、こちらはかのエドゥアール・マネが「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」の構想を練るため別に描いた物でして……」

ドロシー「…それじゃあこれは?」

老人「こちらはフラゴナールの作品ですな…元はとあるフランス貴族が所有していた物なのですが、家が没落し手放さざるを得なくなったものでございます」耽美で柔らかな色づかいで描かれた、川沿いに建つフランスの館(シャトー)を描いた風景画…

ドロシー「そうですか…しかしフラゴナールにしては画題が珍しいですね。普通フラゴナールと言えば優美な雰囲気で上品にまとめた青年男女の絵か、神話をモチーフにした裸婦画が多いものと思っていましたが……」

老人「いかにも…フラゴナールはイタリア旅行の際には自然の風景を絵にしておりますが、建物を描いた物というのは珍しい……それだけにこの絵には価値があると申せましょう」

ドロシー「なるほど」




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