ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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612: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2022/07/21(木) 01:26:56.44 ID:nuHZs7J40
…しばらくして・食堂…

伯爵「えー、では……今宵、小生の主催いたしますこのささやかな夕食会にプリンセスのご臨席を賜りましたこと、心より御礼を申し上げます」伯爵が一礼すると、プリンセスも微笑みを浮かべて礼を返した……

伯爵「つきましては御一同、どうぞグラスをお持ちいただき……」


…見事なグラスに注がれた黄金色の美しいシャンパンがろうそくやランプの灯りに照り映え、乾杯のために立ち上がった貴族たちがまとう色とりどりの服やきらびやかな宝飾品、また勲爵士のリボンや勲章がきらきらときらめいている……


伯爵「では、これからも陛下の治世の長きことを願って」乾杯の音頭を取ると一同はシャンパンを飲み干し、一旦席につく……すぐに次の一杯が注がれ、今度はプリンセスが返杯のために挨拶をする……

プリンセス「今宵、私をお招き下さいましたベニングスビー伯と伯爵夫人、またウィンターボザム伯爵夫妻、グレイスレード伯爵夫妻、バーコウ男爵夫妻、サザード男爵夫妻……また今宵を共に過ごします皆様方の健康を祝して、乾杯」


…有力貴族たちの名前を次々と誤ることも言いよどむこともなく網羅しつつ、それぞれに軽く一礼し、無事に言い終えるとグラスを持ち上げて乾杯した…


伯爵「いやはや、まさか本当にプリンセスにご来駕頂けるとは……わたくしめは嬉しく思っております」

プリンセス「いえいえ、伯のお誘いをむげにお断りするわけには参りませんもの……♪」

伯爵「恐縮でございます」


…にぎやかに会話が弾む中、さっそく前菜がやってくる……新鮮なエンドウ豆のきれいな緑色とサーモンの鮮やかな鮭色を残したままムースにした手間のかかる一品や、小さなクラッカーに丁寧に盛り付けられたフォアグラのパテにクリームチーズ、アスパラガスなどがさっと供される…


太めの伯爵夫人「相変わらずベニングスビー伯は美食家でいらっしゃいますわね」

伯爵「ははは、ポールトン伯爵夫人はフォアグラがお好きだとうかがっておりましたので、特に用意させたのですよ」

伯爵夫人「まぁまぁ、お気遣いいただいて……大変結構なお味ですわ」

口ひげの伯爵「うむ、実に見事だ……ベニングスビー伯はいい料理人を抱えていらっしゃる」

伯爵「いやいや、過分のお褒めをいただき恥ずかしい限りです」

…一方・テーブルの末席…

鼻のとがった貴族令嬢「……それで、貴女様はプリンセスとご学友でいらっしゃるの?」

アンジェ「え、ええ……」


…アルビオンでは白い目で見られがちなフランス系の名前を持ち、かつ「平民」であるアンジェは本来このような席に呼ばれることすらあり得ないが、あくまで「プリンセスのご学友」としての、いわば「添え物」として招待され、つんと取り澄ました貴族令嬢の端くれと向かい合う席に座っていた……その点では形ばかりとは言え貴族令嬢であるベアトリスの方が席次が上で、テーブルの中央より少し手前、あまり悪くない位置に座っている…


貴族令嬢「そう」

アンジェ「はい……」いかにも貴族に圧倒されてしどろもどろ……といった演技をしながら、抜かりなく室内を観察しているアンジェ……

アンジェ「……(給仕の中に内務卿のエージェントが一人、二人……合わせて四人)」

騒がしい貴族令嬢「それにしてもプリンセスと同じ夕食会にお招きいただけるなんて! わたくし、もう感激で胸が一杯ですわ!」

アンジェ「……」

…いくつか離れた席に騒がしくしている貴族令嬢がいるおかげで注意がそちらに引きつけられ、あたりを観察するのには都合がいい……きらびやかな服の伯爵に仲むつまじい様子の男爵夫妻、優雅な物腰の伯爵令嬢に美男子の男爵子息……

貴族令嬢「……それで、プリンセスとお話しするような機会はございますの?」

アンジェ「いえ。わたくしのようなものでは、そのようなことは滅多に……」相手が退屈になるようあいまいな返事をしながら、並んでいる貴族たちを冷めた心で観察しているアンジェ……料理を口に運びつつ、胸中ではコントロールに送る報告書に書くべき、貴族たちの人格的欠点や素行を書き並べている……

豪華な格好の伯爵「いやはや、それがですな……」

アンジェ「……(あの伯爵は株で一財産をすったけれど、まだ見栄を張ってぜいたくな暮らしをしている……金銭面で転ばせることはたやすい)」

丸顔の男爵「良かったねえ、おまえが一緒で私も嬉しいよ」

しとやかな男爵夫人「ええ、あなた」

アンジェ「……(あの男爵夫妻は仲むつまじい振りをしているけれど、実際には政略結婚で関係は冷え切っている……ちょっとした誘いがあれば、どちらも火遊びにのめり込む可能性はある)」

優雅な伯爵令嬢「まぁ、ふふふ……♪」

アンジェ「……(あの男爵令嬢は裏で会員制サロンに入り浸っては、店の女の子を相手にみだらな行いの限りを尽くしている……それをネタに脅しつければあっという間に情報を吐くはず)」

………

…


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