ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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670: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/11/16(木) 01:32:59.78 ID:xPUgPNUb0
…カフェ…

給仕「らっしゃい、サ・ヴァ(元気か)?」

地元の農夫「ウィ、サ・ヴァ、サ・ヴァ! エ・ヴ(あんたは)?」

給仕「サ・ヴァ! ビァン、メルスィ(元気さ!ありがとな)」

農夫「そいつは結構だな、いつものくれ」

給仕「はいよ……いらっしゃい、マドモアゼル!」

アンジェ「ウィ」気のない返事をして、店内と外の道路を視界に収めることが出来るカウンター席を手際よく確保する……

ドロシー「ふー……夜になると案外寒いな」

アンジェ「何か飲みましょうか」

ドロシー「ああ、そいつはいい。紅茶かコーヒーか……それともいっそワインかカルヴァドスで腹の中から暖まるって言うのも……」そう言いかけたところて言葉を切った……

アンジェ「……あの男ね、貴女もそう思う?」

ドロシー「ああ。店の外、ベレー帽。茶色いコートの襟を立てているやつ……」

アンジェ「それからテーブル席の船乗り風の男」

ドロシー「お前さんもそう思うか……素人を騙すにゃあの程度で十分かもしれないが、あれじゃあまるで金魚鉢の中のサメだ」

アンジェ「それはともかく、何を見張っているのかしら」

ドロシー「どうやら道路の先……ちせが会いに行った例の事務官の屋敷の方を見張っているようだな」

アンジェ「……話を聞いてみるとしましょうか」

ドロシー「ああ……私が先に動くから、二分ばかり間隔をあけてから出てくれ」運ばれてきたミルクコーヒーをがぶっと飲むと、料金をカウンターに置いて手早く出た……

…店の横手…

ベレー帽の男「くそ、冷えるな……ジュリアンの野郎、店内で見張りだなんてツイていやがるな」夜霧のせいか、足元からしんしんと沁みてくる夜気に耐えようとコートの襟を立て、薄暗い横町で足踏みをしながら道路の先を見張っている……

ドロシー「……よく分かるぜ、監視任務ってのは大変だよなぁ」

ベレー帽「っ!?」背後の暗闇から声をかけられ、コートの下に手を突っ込むと同時に振り返ろうとする……

ドロシー「おっと、そいつはやめた方がいいな……でないと頭が吹っ飛ぶぞ?」銃の撃鉄を起こす小さいけれども緊張感のある「カチッ」という音がした……

ベレー帽「へっ、それでこっちをどうにかしたつもりか。 言っておくが、おれは一人じゃないんだぜ?」

アンジェ「……さっきまではね」どこからともなくするりと現われたアンジェが、発砲しても背後のドロシーに流れ弾が当たらないよう、ベレー帽の男に対して二時の方向に場所を占めた……

ベレー帽「ハッタリだ……そうに決まってる」

アンジェ「そう言うと思って持ってきたわ」足元に何かを放り出したアンジェ……

ベレー帽「……っ!」アンジェが地面に放り出したのは相方の持っていたマドロス(船乗り)パイプで、それを放り出す間も手に持った小さな.320口径のリボルバーはぴくりともしない……

ドロシー「小口径だからって侮らない方がいいぜ? こっちが狙っているのはお前さんの目の玉だから、当たったら鉛玉が脳味噌までかき回していくことになる……さてと、それじゃあ任務について詳しく教えてもらおうか」

………

…事務官私邸・食堂…

事務官「さ、遠慮せず飲みなさい。駿河から船便で届いた茶葉だ……きちんと金属の内張りをした茶箱に入っていたから、風味は落ちていないはずだ」

ちせ「では、ありがたく……」日本を思い起こさせる懐かしい香りが鼻に抜け、渋さの中にほのかな甘みのある味が舌先に広がる……

事務官「茶だけではなんだから菓子もつまむといい……といっても、羊羹くらいしかないが」

ちせ「いやいや、十分じゃ」厚く切られて、角がぴしりと立っている紫がかった甘い羊羹を黒文字(※クロモジ…香木)の楊枝で切って口に運ぶ……

事務官「しかし君のような年端もいかぬ少女が伝書使とはな……暗号表はちゃんとあるんだろうね」

ちせ「無論じゃ、肌身離さず持って参った」

事務官「ならいいが……君がお茶を飲んでいる間に確認させてもらおう」

ちせ「では、これを」

…かんざしを抜き、そこに巻き付けてあった暗号表を広げて手渡した……薄いあぶらとり紙のような紙質をした暗号表は広げるとかなりの大きさになるが、きちんと折りたたむと、それこそちせが食べている羊羹一切れに隠れてしまうほど小さい…

事務官「どれどれ……確かに我が国の暗号表だ、ご苦労だった」

ちせ「うむ」真面目に返事をしつつ、羊羹を切って口に運んだ……


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