ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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672: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/11/27(月) 01:26:35.39 ID:ovQ0LCAF0
…そのころ・邸宅の外…

ドロシー「……始まっちまったみたいだな、どうする?」

アンジェ「ちせ一人なら切り抜けること自体は出来るはず……だけれど、暗号表や事務官を守りながらとなると厳しいでしょうね」

ドロシー「とはいえ、フランス野郎にもノルマンディ公の配下にも暗号表をくれてやるわけにはいかないぜ?」

アンジェ「それと同時に、私たちの姿を日本政府の事務官に見せるわけにはいかない」

…事務官の私邸へと至る道は左右にこんもりとした小さい森や、ノルマンディ地方特有のボカージュ(果樹園を区切る生け垣)がしげり、接近する二人にとっていい遮蔽物になっていた……事務官の私邸がある方からは夜霧でこもった銃声が長く尾を引いて反響し、事態が容易でないことを再認識させる…

ドロシー「だな……じゃあ「陰ながら援護する」ってことでいいか?」

アンジェ「ええ。屋敷を包囲している連中を後ろから叩けば、少しはちせも楽になるでしょう」

ドロシー「よし、それでいこう」

…数分後・森の外れ…

ドロシー「……なんだ、ありゃあ?」

アンジェ「どうやら東洋の旗指物のようね」

…見張りに見つからぬよう地面を這いずり、小枝を踏まぬよう足元に気を使い、夜露に濡れた二人が邸宅の見える位置にたどり着くと、ドロシーが思わず声をあげた……ドロシーの視線の先、数十ヤードばかり離れた正面の道路や邸宅の前庭には幾何学模様や図案化した動植物をあしらったさまざまな紋を描いた縦長の旗指物が何旒もひるがえり、ちせのような和服姿や一種の軍装と思われる格好をした男女が邸宅を取り囲むように詰めかけている…

ドロシー「それは分かるが、あの紋章はどこのだ?」

アンジェ「あの印なら以前資料で見たことがある……確かあれは「江戸幕府」の紋章だったはずよ」

ドロシー「江戸幕府? そいつは確か当時の日本で「エンペラー」を差し置いて実際の政治を取り仕切っていた「ジェネラル」のことだったよな?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「……そんな瓦解してから四半世紀は経とうって連中が、どうしてフランスくんだりで?」

アンジェ「さぁ……いずれにせよ詮索は後回しにしたほうが良さそうね」

ドロシー「違いない。おおかたちせはあの包囲された建物の中にいるに違いないからな……行くぜ?」

…一方・邸内にて…

ちせ「まずは一人片付いたか……」

ちせ「それにしても見事な業物じゃ。刃表に一滴の血も残しておらぬし、豆腐でも切るようにやすやすと斬れた……人斬りに使うなど申し訳ないほどじゃな……」そうつぶやいて壊れたテラスから正門の方を眺めると、そこに広がる光景に愕然とした……

…黒い洋装の軍服に身を包み、前庭へと駆け込むなり石造りの花壇や噴水を盾にとって膝撃(しっしゃ…ひざ立て撃ち)の構えを取るライフル銃の兵、その奥で采配を振るって指揮を執っている羽織袴の侍たち……かたち良く整えられた庭木の周りにはかがり火が焚かれて陣が作られ、何旒もの旗が夜風にはためいている……弾痕もなまなましいレンガの柱からそっとのぞいて旗印を確かめるなり、ちせはさらに驚愕した…

ちせ「あれは、奥羽越列藩同盟の五芒星!? その隣は……葵の御紋!?」

ちせ「それに仙台は伊達の「仙台笹」に、庄内の「姫路剣方喰(ひめじけんかたばみ)」の紋まで……」建物の外に林立している旗指物にはそれぞれ旧幕府軍方についた藩の家紋が染め抜かれている……

ちせ「……これは並々ならぬ事態じゃな」

声「ガットリング銃! 薙射(ていしゃ)、用意!」夜風にのって攻囲陣からの命令が聞こえてくる……

ちせ「まずい……!」

声「てーっ!」

…ちせがふたたび伏せると同時に、ガトリング銃が邸宅の正面を舐めるように蜂の巣にしていく……一階への銃撃が終わると、今度は戻るようにして二階を掃射していき、あちこちにガラスやレンガ、しっくいのかけらが降り注ぐ…

ちせ「このままではじりじりと包囲を狭められてしまうばかり……思案、思案じゃ……」

…屋敷の外周…

ドロシー「……おいおい、これじゃあまるで戦争だな」

アンジェ「それに官憲や軍隊が駆けつけてこないところをみると、あの連中とフランス側で何らかの了解があるとみていい」

ドロシー「どうやらそうらしい……ってことは、フランス野郎も敵ってことだな」

アンジェ「いつもと同じね」

ドロシー「ああ、違いない……とにかくあのガトリング銃を黙らせようぜ。ちせのやつ、あれじゃあ頭も上げられないだろう」

アンジェ「そうね」


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