77: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2018/05/11(金) 23:36:17.82 ID:A81DMCj70
撫でられ、抱かれ、やがて堕女神の胸の中で聞く鼓動が生命の潮騒に代わる。
産声を上げる前に絶えず聴いていた、あの音と気付くまではゆるやかに時が過ぎ、
気付いてからは――――さらに、時が歩みを緩めた。
堕女神の呼吸音は涼やかな風となって、伝い流れるように吐息が頬を撫でる。
彼女の指が梳くように髪を撫でる感覚は、優しい海風の戯れに変わる。
いつしか堕女神の漏らす吐息は鼻唄へ変調し、やがて子守唄へと行き着いた。
勇者の知る世界の言葉ではなく、彼女のいた神代の調べが広い寝室へ響く。
言葉の意味は知らずとも、子守唄であるのなら籠める祈りはただ一つ。
深まった夜の闇の中、寝所で子へ聴かせる詩は変わらない。
――――今はただ眠りなさい、いとし子。
――――目が覚めた時はきっと、暖かい朝日が貴方を照らす。
不朽の祈りの中で勇者は微睡み、やがて――――蕩けるようにして、眠る。
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