9: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/05/20(日) 18:19:14.69 ID:8NRe1KMEo
『あはは、プロデューサー、まるで私のおかげで勝てたみたいに言ってますよ。不思議ですねぇ』
『茄子がまるで予言したように勝ったからなぁ』
歓喜に湧く横浜の町並みを、どうやって出たものか。
ひとまず球場の関係者駐車場にある社用車に戻り、シートに着いて暖房をかける。
が、ビールを浴びたせいで運転はできない。外の人だかりのせいでタクシーも呼べない。
俺たちは地下で、歓喜のとどろきにのしかかられていた。
『プロデューサーがそんなことを言うんですか。
私をこんな風に仕立て上げた張本人じゃありませんか。これもラクじゃないんですよ』
助手席の茄子は口調を尖らせる。
『茄子のおかげで幸せになれた、っていうんならアイドル冥利じゃないか』
茄子は「あなたのせいで、みんなが私の幸運にすがっている」とでも言いたげだった。
『ファンから幸せにしてくれってすがられるのが、アイドルだろう。
そう仕向ける側の俺までそうなっちゃ――なり切っちゃいけないのも、確かだが』
『いやいや。このままだと、あなたまであっち側のヒトになってしまいそうで』
ここ最近の茄子の崇められっぷりは――俺が仕向けたこととは言え――
アイドルというより、新興宗教の教祖のようになっている。
『なっちゃ、いかんのか』
『あなただけはダメですよ。知ってるでしょう? 私の幸運、永遠ではありませんよ』
茄子は、幸運ゆえに自分のアイドル業が成り立ってるのでは、と思ったのか。
たとえそうだとしても、幸運が尽きたらアイドルを辞める潮時が来ただけ、と俺は勝手に思っていた。
どうせ、茄子は神社を継がねばならないのだから、いつかは芸能界から去っていく。
いつか失われるなら、それまで精一杯利用させてもらわねば。
『たとえ一時でも、茄子の幸運がみんなの幸せになるなら、いいじゃないか』
『確かに、それを嬉しいと言ったこともありますけど』
『今夜の件で、あっちの球団のファンからいろいろ言われるだろうが、あまり気にするな』
茄子の幸運体質は、どうしても嫉妬を免れ得ない。
それなら幸運を分け与えて、嫉妬される以上に、崇められることができるならばいいじゃないか。
俺はそう都合よく考えていた。
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